29:涙の意味
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て思うプレイヤー達の一人なんだよっ!」
「いえ……悪いだなんて……そんなこと、全然ないです」
言葉にしながら、あたしは思っていたことを口にした。
「――きっとあなたは……死神なんかじゃないです。そんなことを言える人が、人を傷つける死神な訳がありません」
「―――――。」
その時。
黙るユミルの表情はその数秒の間に、様々な変化をした。
まず驚きに目を丸くし、口をつぐんで何かを逡巡し、じろりと細めた目であたしを見つめたかと思えば、疑るような視線を送り……そして、氷のような、あの冷たく睨んでくる目に豹変した。
「――そんなことない。ボクは、悪い人間だよ」
「ユミルさん……?」
その声はどこか平坦で、感情を押し殺したかのようだった。
ついさっきまで頬を赤らめながら喋っていた時とは……まるで別人だった。
「そもそも、ボクはこの場に居る時点で、キミの思ってるような優しい人間じゃないんだよ?」
「それは、どういう意味ですか……?」
あたしがそう問うと、ユミルの目が一層冷たくなった。
「キミは死神の調査に来ただけかも知れないけど……ボクはユニコーンを、あの仔馬を――……殺しに来たんだよ?」
「…………!」
その時、あたしはユミルの言わんとしている事を理解した。
例えデータであっても、仮想世界であっても、命の尊さに変わりはないことを、あたしはピナを以ってして既に痛感している。
――ユミルは、ミストユニコーンを、殺す。
彼はその事実を、微塵も隠すことなく私に突きつけていた。
「ボクは自分の目的の為なら、あんないたいけな仔馬の命だって奪える……そんな、冷たい人間なんだ」
「でもっ、あたしはキリトさんから聞きました! それは、あなたの唯一信じれるっていう何かの為だって!」
あたしはユミルにそう訴える。
それでもあたしは、ついさっきまでピナと楽しそうにしていたユミルが、本当の彼だと信じたかった。
「その為でも、わざわざボクは、その仔馬を殺しに来てるんだよ。他の道があっても、特別で膨大な恩恵が得られるから、ただそれだけの理由でね……。ボクは、優しくなんかない。せいぜい偽善者がいいところの人間なんだよ」
「……〜〜っ!」
あたしは息が詰まった。
確かに今のユミルの言っていた事は事実だ。
――だけど、そんなことはない……あるはずがない……! だったら、さっきまであたしが見ていた、無邪気に笑ったりしていたユミルは一体なんだったのか……!
そんな、ぐちゃぐちゃに混ざった色んな感情が心の内でぐるぐると巡り、あたしは胸が張り裂けそうだった。
「ならっ……! あなたの言う、その大切なものって……なんなんです
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