29:涙の意味
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ナ……いい子だから、ね?」
しかし、珍しくピナは前回みたいに素直にいかず、うーうーと小さく不満げに鳴きながら、今回の言葉でも頑なに離れようとしなかった。
それにユミルは――まるで、昔の思い出を思い出したかのような、感慨深そうな溜息と同時に、ふふっと苦笑をした。
「――キミは……ホント、ウチにいた猫とそっくりだね……」
そう言ってユミルは僅かに微笑んで……
すぐ目の前にある、
「じゃあ……」
ピナの小さな額に、
「これで……」
ちゅ、と瑞々しい高い音を立てて、
「どう、かな……?」
――軽いキスをした。
するとピナは、きゅ〜っ! と甲高い歓声をあげて瞬く間に空を高く飛び上がり、それからすぐ降りてきてあたしの肩へと着地した。その喉元はとても機嫌良さそうにごろごろと鳴っていた。
それにあたしは……
「……………。……〜〜っ!!」
あたしは呆然と……やましい気持ちは欠片もないのに……頬に熱を感じながらそれを黙って見ていたのに気付き、ぶんぶんと頭を振る。
幻想的な夜の森の中で、少女に見紛うような美しい少年が、胸に抱いた小動物にキスをするという、あまりに絵になる光景につい見惚れてしまっていた。
「……ごめん。こうでもしないと、離れてくれないと思ったから……」
「い、いえ……」
対してユミルはそんなこともなく、至って普通に申し訳なさそうにあたしに言葉を投げ掛けていた。
あたかも、さっきのピナへのキスなどは、常日頃の事のようにし慣れているかのようだった。
「ユミルさん……動物の扱いがお上手なんですね。あちらではペットを飼っていたんですか? ――あっ、ごめんなさい!」
つい相手のリアルのことを聞き出してしまう言葉になってしまい、慌ててあたしは両手で口をつぐんだ。
「……キリトもリズも、ぶしつけにボクのリアルのこと訊いて来たけど……キミは、別にそうでもなかったみたいだね」
思い出したかのように小さく嘆息しつつ、空いた両手の指を絡めて膝の上に置きながら、ユミルは言った。
「…………いいよ。知りたいなら、少しだけ教えてあげる。キミの……ピナに、慰めてもらったお礼もあるしね……」
「ユミルさん……。……はいっ」
あたしはユミルが少し心の内を話してくれるということになんだか無性に嬉しくなり、切り株に座るユミルの隣に腰掛けた。
「……別に、ボクはペットは飼ってはいなかったよ。飼ってたというより……預かってた」
やがてユミルはあたしやピナを見ずに、目の前の森林を眺めながら、落ち着いた声で話し始めた。
「預かってた、ですか? 他人のお家から……ですか?」
その問いに、こくりと小さく
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