歌劇――あるいは破滅への神話
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長い廊下に迫ってくる。壮麗な円柱をたどり、まだ夜が消え残っているかのように暗い天井を振り仰ぐ。己の胸に突き立てるべく、短剣を振り上げた。迫りくる者たちの足音が、遠くの扉の前で止まり、何者かが扉を開け放ったが、御子は見なかった。
「人よ、我が本性を見届けよ!」
恐怖と混乱の叫びが、神殿の外まで溢れてきた。後続の兵士らが朝に濡れる小道でたたらを踏む。
それでも彼らはそうするしかなく、神殿に踏みこんだ。彼らは扉の奥、長い廊下の手前で、もう一度足を止めた。
廊下は青かった。
床も壁も青い石に変わっていた。円柱を伝い、天井にまで達する石。先の兵士らを飲みこみ顕現した、深い青、雲が如く白い筋と、渦巻く星々を閉じこめた高貴な石。
ウラルタは目をこすった。三階席にいた。舞台は真っ暗で、劇も役者も見えなかった。
ここもまだ舞台ではない。
ウラルタは客席を辞した。
更なる上層へ至る道を求め彷徨いながら、ウラルタはルフマンの御子に思いを馳せた。
彼は死んだ。死者の国に於いても死んだ。
老いも自然な死も与えられなかった彼が生の苦悩を断ち切るには、殺されるか、自殺をするしかなかったのだ。
「ああ……」
暗闇に身を浸して、ウラルタは運命を嘆いた。
「私も、そうなんだ……」
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