第百九十六話 二匹の虎その九
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「我等のものとなるのじゃ」
「では我等は百六十万石」
「それだけの大見になるのですか」
「しかも遠江の東と駿河を手に入れた」
「三国を完全に手中に収めるのですか」
「そうじゃ」
まさにその通りだというのだ。
「凄いことじゃろう」
「夢の様です」
「とても信じられませぬ」
「我等が百六十万石なぞ」
「とてもです」
「しかし吉法師殿も信玄殿も言われた」
織田家に降りその家臣となった彼もというのだ。
「我等に百十万石の加増じゃ」
「そして三国を治めよと」
「その様に」
「そうじゃ、居城は駿府にせよともな」
このことも言われたというのだ。
「凄いことであろう」
「ですな、これまで五十万石であったのに」
「いきなり百六十万石になり」
「そして駿府が居城になるとは」
「夢の様です」
「何でも姉川や三方ヶ原を見てのことらしい」
その時に家康の奮戦をというのだ。
「そして一向一揆の時もな」
「織田殿が殿の戦いを御覧になられ」
「そのうえで」
「そうなったわ」
百十万石の加増となったというのだ。
「信玄殿もわしならと仰って下さった」
「では、ですな」
「我等の百六十万石はお墨付き」
「お二人のそれですな」
「そうじゃ、だからな」
それで、というのだ。
「我等はそのご恩に報いる為にな」
「はい、これからもですな」
「織田殿の為に」
「戦うぞ、いいな」
「はい、では」
「その様に」
徳川の家臣達も応える、そして井伊がだった。
家康にだ、畏まってこう言った。
「では次の戦は」
「上杉家とのじゃな」
「はい、その戦では我等が先陣を務めましょう」
是非にというのだ。
「そうしましょう」
「そうじゃな、ここはな」
「そうして上杉と戦いましょう」
「ではな」98
家康も井伊に応えだ、武田との戦は終わったがそれでも織田家と共に上杉家と戦うことを決めた、そして。
信玄と幸村を自身の陣に帰らせた信長は己の家臣達にこう言った。
「ではこれよりじゃ」
「はい、次はですな」
「上杉ですな」
「そうじゃ、上杉謙信と雌雄を決する」
まさにというのだ。
「今度はな」
「それではですな」
ここで河尻が信長に問うた。
「これより加賀に向かいますな」
「加賀にか」
「はい、そうされますな」
「猿夜叉殿のところに行かれますな」
「いや、加賀には行かぬ」
はっきりとだ、信長はこのことを言ってみせた。
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