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FOOLのアルカニスト
合体魔法
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 「やっぱり今回ばかりは、主様も苦戦していますね。あ、また制御が甘くなりかけました」

 見れば徹がなにかしようとして、慌てて中断したことが分かるような素振りを見せている。恐らくは、ペルソナ召喚を試みようとして、制御が甘くなりかけたのに気づき、慌てて中断したのだろう。

 「ふむ、今のは危ないところよのう。後僅かで、化け狐の枷が外れるところよ」

 「そうですねー、今ので八度目でしたっけ?」

 「うむ。もっとも、試みた回数だけなら、その倍を軽くゆくがのう」

 その危うさにハラハラしながら、安堵の溜息をつく西王母をよそに、肝心のチェフェイは愉快げだ。他ならぬ彼女の主の苦境であるというのに、彼女はそれを楽しんでいるかのようだった。

 「ぬしは少しは心配ではないのか?坊は他ならぬぬしの主ではないか」

 「心配?不要ですね。私の主ならば、この程度の苦境容易く乗り越えていただかなくては。それに、己の主が自身の為に、死力を尽くすというのは、女としてこれ以上はない喜悦でしょう」

 西王母の苦言をどこ吹く風で受け流すチェフェイ。確かに、この鍛錬はチェフェイ召喚時に徹自身も全力で戦えるようにするためのものであるから。彼女と共に戦うためと言う意味ではあながち間違っていないだろう。である以上、チェフェイにとって、己の主たる男がその為に白刃を交わし血を流しているのから、その様は喜びと悦楽を生む。その喜悦に身を震わせてみせすらするチェフェイの表情は、これ以上なく淫靡であった。

 「汚らわしい化け狐めが。坊もとんだ悪女にひっかかったものじゃ」

 その様にほんの少しばかりの理解とそれ以上の嫌悪で西王母はぼやく。やはりどこまでも、中国古来より信仰されてきた死の女神と中国最古の悪女は相容れないらしかった。




 外野はさておき、当事者である徹はそれどころではない。制御が甘くなる前に中断したとはいえ、それは致命的な隙となる。ましてや、相手は彼の師である雷鋼だ。その絶好の隙を見逃すはずもない。ここぞとばかりに繰り出される斬撃を徹は必死に受け流す。まともに受ければ折れる。刀どころか骨までも。雷鋼の剛撃は、いくら鍛えた所で子供の体躯である徹には耐え切れるはずもないし、そもそも日本刀は受けるのには向いていない。斬ることに最適化された武器である日本刀は攻撃面には優れていても、防御面では西洋剣に大き劣る。西洋剣が重量で断ち切るならば、日本刀は切れ味と腕で斬るからである。ゆえに、単純に受け止めるというのは日本刀には許されていない。いや、同じ日本刀、あるいは重量が同じ武器ならばそれもできようが、雷鋼が扱うのは太極剣であり、両刃の肉厚な剣である。徹の愛刀『長篠一文字』とは比べくもない頑丈さだ。

 極限まで練られた体術に組み込まれた剣術
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