ターン18 冥府の姫と純白の龍
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………多分何を言っても無駄なんだろう、今のこの人たちには。どんだけ外国行きたかったんだ。
「さて、と。じゃ、僕もちょっと自由にさせてもらうわ」
「あれ、お前も俺たちと来いよ!あの武藤遊戯さんのお爺さんが住んでるんだ、もしかしたら遊戯さんがいるかもしれないし会いに行こうぜ!」
「清明君も行こうよー」
「そうだドン、先輩も来るザウルス」
なんか色々声を掛けられたけど、そんな気分ではないので軽く手をふって皆と別れる。と思ったら、なぜか夢想だけが同じ方向に向かって歩いてきた。ちょっと見つめていると、気にしないで、と言わんばかりに手を振ってくる。
「私は駅に行きたいから。ここからだとこっちが一番近いよね、って」
「う、うん……」
確かに、ここからちょっと行った先のとあるケーキ屋を右に曲がってのルートなら10分も歩けば電車に乗れる。だけど、なんでそんな地元民しか知らないようなルートを知ってるんだろう。
まあ、ここまでくればなんとなく予想つくけどね。
「清明はどこまで行くの?だってさ」
一瞬迷ったけど、その道で駅まで行く気なら隠す意味もないだろうと観念する。そこまで隠し通したい話でもない。
「そこのケーキ屋」
「ふーん」
何か聞かれたらどこまで話そうかとも思ってたけど、幸いなことにそれ以上は何も言ってこなかった。
「じゃ、僕はここで」
「………うん、だってさ」
別段変わったこともなく、そのケーキ屋の前にたどり着く。夢想と別れの言葉を交わしてから軽くチェックをしてみると、こじんまりとした店の周りにはごみ一つ落ちてなく、毎朝きちんと掃き掃除していることがよくわかる。ただ、そこで店のガラスがちょっと汚れてるのを放置する神経が僕にはわからない。情けない。
「コホン。………オイコラ生きてっか馬鹿親父ぃ!」
これが僕がここに行きたくなかった理由。わざわざ修学旅行で自分の出身地に行くとか、バカバカしいにもほどがある。もっとも、他のメンバーを呼ばなかった理由はもう一つあるんだけど。なるべく大声を張り上げながらドアを蹴破るぐらいの勢いで開け放って中に入ると案の定、すぐに反応が返ってきた。
「あー?なんだ金食い虫のドラ息子、お前こそまーだ生きてたのかよ?」
「見てのとーり、1年前から死んでるよっと。まあせっかく来たんだし、お茶の一杯でも用意しといてよ。僕は線香上げてるからさ」
「勝手にしてろ、奥の部屋な」
「はいよ。場所は変わってないね」
誰もいない店の中を突っ切って居住スペースに入り、その奥にある仏間に向かう。これが、他の皆を誘わなかった理由だ。この人の墓参りを欠かすつもりはないけど、そんなもの十代たちに見せたら変に気を使われる可能性がある。今はみんないろんなことがあるの
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