71章 グレン・グールドに傾倒する松下陽斗
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られた、その『ゴールドベルク変奏曲』は、
全曲を弾くと、1時間を超えるという大曲である。
この曲は、もともと、チェンバロのための練習曲 (BWV 988)で、
ピアノには向かないとされていて、繰り返しも多く、単調で、
ピアニストも好んで弾かないといわれていた。
グールドは、そんな既成の価値観を打ち破って、
デヴューアルバムでは、楽譜の繰り返し記号を無視して、
全曲を、30分台で弾ききったのである。
そしてグールドは、アメリカでのデヴューばかりではなく、
ピアニストとして不動の地位を獲得したのであった。
「美樹ちゃん、グレン・グールドはね、50歳という短い人生だったんだけど、
芸術について、こんな、いい言葉を残しているんだよ。確かこんな言葉なんだけどね。
芸術の目的は・・・、アドレナリンやドーパミンのような脳内の快楽物質を分泌させて、
刹那的な快楽ばかりを追うのじゃなくて、感覚を研ぎ澄ますことによって、
新鮮な驚きや喜びに出会ったり、体験したり、心の平安の状態保ったりして、
生涯をかけて、ゆっくりと、人間らしさとでもいうのかな、そんな楽しく自由な人間性を、
構築してゆくところにあるっていってるんだよね。
これって、すごく、現代人の参考になる言葉だと思うんだよ、美樹ちゃん」
「そうね、さすが天才ね、いい言葉を残してくれているのね」
美樹と陽斗は、笑顔で、一瞬、見つめ合った。
≪つづく≫ --- 71章 終わり ---
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