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乱世の確率事象改変
彼女の為に、彼の為に
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手な押し付け、それでも……もうこんな地獄は奪って変えてやると、殺し殺された誰もに約束する為にあの言葉を紡ぎ続けた。

「どれだけ……あの人が世界を変えたかったか、分かりますか?」

 震える掌をぎゅうと握りしめて、彼は唇を噛みしめた。
 秋斗だけが分かる戦う理由。どうして其処まで……狂っていったのか、秋斗は正しく理解出来た。
 救いたいのに救えない。助けたいと思っても幾多も手から零れ落ちて行く命、それが哀しくて哀しくて……しかし味方を一人でも多く救えているのが嬉しくて嬉しくて……人の生き死にを割り切れないまま、壊れる程に追い詰められていった。

――ああ……だから俺は黒麒麟になれない……。

 敵は殺すモノ、世界を変える為に。
 乖離したような自分の心は悲哀を伝える……けれども彼自身は敵の生き死にには拘れない。作り物のような、傍観者のような感覚で理不尽を行う彼では、違うのだ。

 故に、徐晃隊は彼に……ほとんど同じだが違うと言った。
 彼らは気付けた。戦場で常に背中を追い掛けてきた為に、その差異は小さく見えて大きかった。

 それでも、と思う。
 秋斗は演じる道を選んだ。だから引くことは無く、膝をつく事もしない。自責の海に沈む事も無ければ、多くの誰かの為に狂う事もしない。
 小さいけれど大きな差異に気付けるのは彼らと雛里くらいなのだ。それなら……やはり大嘘つきになるだけ。

 彼の中で、黒麒麟のパズルは完成した。意思に反して湧き立つ自己乖離の感情も理解出来た。
 それはまるで一枚の絵を眺めるように……秋斗は心の中を観測し、読み取るしか出来なかった。

「……教えてくれてありがと。俺は道化師だから、黒麒麟の本当の気持ちは分かったつもりにしかなれないなぁ」

 ぐるりと一巡、彼は死の山を見渡した。
 醜悪な現実にじくじくと苛む真黒い感情の渦。
 自分が作り上げた地獄を見つめて、秋斗は笑い、せめてと望む。

「誰の想いも繋いじゃいなかったんだ……俺は。これからでも……遅くないかな?」

 とてとてと駆けてくる足音と、きゅっと握ってくれる小さな手があった。分かっていますと、そう言うように。

「あなたが平穏な世を望んで戦う限り。
 あの人が戻るまでの間……いえ、戻ってからもずっと、優しい皆さんと一緒に想いの華を繋ぎましょう」

 この場所でなら、それが出来るから。
 秋斗と想いを同じくする華琳の元で、屍を階として天に上る覇王の元でこそ……その在り方を共有できる。

 夜天の元、秋斗は静かに目を閉じた。
 背中には生きているモノ達の声が聴こえている。目の前には自分が作り上げた地獄が静かに横たわっている。
 生死のハザマで、約束を一つ。
 自分が作り上げたい平穏な世に……黒麒麟が望んで、
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