一区切り
第一話
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「おはよう、今日も良い天気ですね」
話し掛けた相手は何も言わない…それは仕方のない事だ。
写真に話し掛けても答えてくれる筈もない……それに、彼女はもう死んでしまっている。
才能があったのか、最年少の天才軍事エンジニアという肩書きを得て三年…と言っても一年前に俺は軍から抜けた。
専属していた特殊部隊の皆様には何も言わず、上層部の連中のみに告げて。
書類の整理もデータの消去も楽だった…後を着けられない様に移動するのも、偽の戸籍謄本とパスポートを作るのも、そんなに難しい事ではなかった。
死んだ親しい人間の存在を忘れる事以上に、難しい事はない。
「あらおはよう橘ちゃん」
「おはよう、お婆さん」
今は日本に渡って小さな古い民宿に住み込みで働いている…エンジニアとしての技術は、時々故障したエアコンや車を修理するのに丁度良い。
……日本国籍の独系日本人と戸籍を作ったのは橘という偽名の為。彼女は橘という柑橘系の木の花が好きだった。
なるべく民宿を営んでいるお婆さん以外の人と関わらない様に生きて一年…それでもやはり、数人の人間とコミュニティを築いていた。
魚屋の元気で大きな声で笑うオジサン、八百屋の野菜好きで女運のないお兄さん、近くの一軒家にひとりで住んでる住んでいるお爺さん…皆、踏み込み過ぎない良い人達。
「あぁ、お客様…そちらは客室では御座いませんよ?」
……でも、今日は様子が違うみたいだ。
「見つけたぞ」
民宿の俺の部屋に入ってきた黒服の男達…日本人だから、軍の追手ではないらしい。
では何の用件なのか…心当たりは幾つかある。
ひとつ、国籍の偽り
ふたつ、偽の戸籍
みっつ、大使館経由で本国から強制送還の依頼が届いた
よっつ…これが今のところタイミング的に一番有力。
「全国一斉「IS適性検査…でしたっけ」…物分かりが良い様だな」
黒服は車に乗る様に指示を出し、俺は大人しくそれに従う。
何であれ、本国の軍の関係者ではない様だし…検査程度なら問題はない。
お婆さんには説明したし、夕飯までには戻ると伝えておいた。
2
検査会場はガラガラ…それも仕方ない。
全国一斉IS適性検査を政府が発表してもう1週間が過ぎようとしている…俺がきっと最後なのかもしれないな。
……そう、思いながら係員の指示に従い検査を進める。
と、言っても書類を書いてISに触れるだけの簡単な検査なのだが…周囲が殺気を隠そうともしていない女性ばかりなので面倒だ。
嫌味は聞こえるし妙な視線は突き刺さってくるし…はぁ。
「俺だって適性があるだなんてこれっぽっちも思ってませんよ……」
そう呟くと顔を逸らす数名の女性…何か後ろめたい事でも有るのだろう。
目の前のISは世界で比較的ポピュラーな機体
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