第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
1.August:『The Lightning』
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た『魔術』を知る者ならば思うだろう、堅牢無比な城郭を。
幾何学的な紋様が刻まれた、木製の扉を開く。冒涜的な形状のドアベルが、怪物が嘲笑うかのような音色を鳴らす。これだけで、並みの魔術師ならばもう、この店の『闇』に呑まれていよう。
「────おや、こんな昼間からとは珍しいですね。コウジ君?」
「お邪魔します、ローズさん」
奥のカウンターから掛かった声、それが最後の罠。主の招待に、“無形の闇”はそれを最後に消えていく。
「お邪魔いたしますの」
「お、お邪魔します」
続き、こう言う店に入るのにも抵抗がないのか黒子、少し憚りながら飾利。そして、心地好いクーラーの効いた室内に。
「うむ、邪魔する────“微睡みの蟇王”よ」
「これはこれは、ようこそお出で下さいました────“悪心影”殿」
最後に踏み入った市媛の、その言葉に苦笑しながら。アンブローゼスは、採譜を取り出して。
「御注文をどうぞ、可愛らしいお嬢さん方?」
老若男女問わず虜にするような笑顔と声色でもって。少女達に語りかけた。
………………
…………
……
「…………ふぅん、あれが」
少女が、それを眺めている。?屍のような服装の付き人らしき男二人が差し掛けた、傘の影から歩み出て。海の気配を連れた、烏賊か蛸の触腕を思わせるウェーブの掛かった水色の髪の。悠久の時を掛けて深層を巡る海洋水のような、深い藍色の瞳をした。
まるで、さざ波のような声で呟きながら。紺色の中華風の装束を纏う水死体の如き白蝋の肌を、汗一つも掻かずに陽射しに晒して。
「“御父様”より格好良いわね、“叔父様”は」
その少女に、傘の影が差し掛けられる。付き人らしき、目深に帽子を被った男二人。どちらも丘に揚がった魚か何かのように、酷く歩きづらそうな様子の。
「御嬢様、太陽ノ光ハ、オ肌ニ、良クナイ、デス」
「御嬢様、風ニ当タル、オ肌ニ、良クナイ、デス」
「分かってるわよ、五月蝿いわね……」
従者二人の、たどたどしい言葉。日本語に不慣れなのではなく、喉自体が言葉を発するのに向いていないような。
「今晩が楽しみだわ、ふふ……」
それに踵を返した“水妖の娘”は、実に楽しげに沸き立つ陽炎の波に消えてい
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