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猫の憂鬱
第3章
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ふらっと課長が何処かへ行き、其の間龍太郎はタキガワに就いて調べられる限り調べた。
ウィキペディアは作成される度片っ端から削除する癖に、顔写真は彼方此方に散らばり、作家としてのホームページは当然、ツイッター、おまけにフェイスブックもある、ハプニングバーのホームページにもオーナーとして顔が載っている。
何の情報を、此奴は消したいんだ…?
此処迄情報を全世界に性趣向と共に発信するのに、何故ウィキペディアを削除するのか。
はたと、掲示板の文字にスクロールする手が止まった。

タッキーは結婚してんの?

此れか、とタキガワが抹消したい情報を突き止めた。
雪村涼子基青山涼子、其の婚姻関係をタキガワは絶対に世間に教えたくない。
龍太郎は其の儘別窓で青山涼子を検索し、ウィキペディアからファンの個人サイト迄見て、確信した。
タキガワとの婚姻関係が、何処にも無い。
子供が居た、そして筆を折った理由迄書かれるのだが、子供の父親に就ても又其の時の婚姻関係に就ての情報が一切無い。
タキガワの掲示板に目を戻し、続きを読んだ。

――出来んの?彼奴
――タッキーなんかで、俺は童貞だー、って云ってたよ
――俺、彼の人がセックスしてんの店で見たんだけど、そうか幻覚か
――童貞だー、て云い乍らセックスしてたよ おっぱいおっきいネーチャンと
――あふぉ過ぎる
――あれじゃないですか、AFが童貞って事なんじゃないですか(意味深)
――矢張り…(ゴクリ…
――アッーーーーー!
――違う!俺はバイだ!可愛い男の子良いね!
――日本の男の子可愛いね!
――日本の男の子になら掘られて良いよ!
――タッキーチーッス 唯のホモですマジで有難う御座います
――俺と結婚したがる女性多いけど、俺、ペニス一本しかなんだよね、だから結婚しない って云ってた
――如何云う事だってばよ…
――一寸何云ってるか判らないですね
――娘欲しいとは云ってた
――犯罪の匂いしかしない

目眩を覚えた龍太郎は目元を押さえ、覗いた井上がゲラゲラ笑って居た。
「性格破綻者か…」
「変人なのは間違いねぇな。…そうだ、タキガワ。」
「うん。」
「彼奴、結構学歴高いぜ。彼奴、慶応出てる。学部は知らねぇけど。」
「へえ。」
感心する龍太郎と馬鹿にした木島の“へえ”が重なる。
「慶応って変人しか居ないの。」
「は?」
「だって御前、慶応じゃん。変人じゃん。」
木島は笑い、井上を挑発した。
課長が居ない時に限って喧嘩をする。
落ち着け、と龍太郎は井上の肩を押さえ、木島を見た。
「課長が居ないんです、大人しくして下さい、木島さん。」
「おいおい、早稲田。テメェも変人だろうが。」
「拓也、乗るな。」
「明治煩いぞ、黙ってろー。文系男子は引っ込めー。」

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