第3章
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い。
「お母さんも居ないし、さ、ね?全部、来ちゃ…来ちゃった、のね?」
「雪村さん、珈琲、飲んで良いですよ。」
龍太郎の言葉に雪村は珈琲を飲み干し、序でに水も氷だけにした。
「…判った?」
「…はい。バッチリ。」
「トリカブトって、凄いんでしょ…?」
「まあ、専門家曰く、キングオブ猛毒、らしいです。」
「うへぇ、何其れ、酷い…」
雪村は何故か、其の目ではっきり天井からぶら下がる妻の姿を見ているのに、毒殺だと思ったらしかった。
「誰に殺されたの…?」
「いえ、未だ断定は…」
「嘘、嘘だよ。だって、猛毒なんでしょう?」
「猛毒、と云っても、口にした瞬間、死ぬ訳では無いので…」
「仮に、自殺だった場合。」
黙って居た井上が人差し指をテーブルに立てた。
「アコニチンは、早くて、摂取して一時間で死ぬ。で、症状が出るのが、摂取してから二十分位らしんだわ。其処でこう、気力をね、振り絞って。」
云い乍ら井上は、凄く面倒臭ぇ女だなと思った。雪村もそう思ったのか、じっと井上を不信感抱く目で見ていた。
「そして、他殺だった場合。」
「他殺に決まってるじゃないですか、そんな。トリカブトなんて悪趣味な…」
「そうです、正に悪趣味なんです。」
ココアを飲み終わった龍太郎は店員に珈琲を三杯注文した。
「奥様に、すごぉおく、精通した方だと思います。」
「其れか、すごぉおく、サディストか。」
「…其れって、唯の元旦那じゃないですか。」
「…済みません、もう一度。」
「涼子の事に詳しいサディストですよね?元旦那ですよ。すごぉおく、サディストですよ。」
「…御存知なんですか?」
「はい。」
「早く云えよ…」
「今、聞いたので…」
成る程、青山涼子の元夫は、遺産欲しさに相続人の青山涼子を“よもぎ餅”で殺そうとしたサディスト。然しうっかり、殺す筈だった妻では無く、同趣向の息子が食べてしまった、此れは悲惨だ。
遺産は入らない、妻は死なない、うっかり息子は死んでしまい、離婚され、妻は日本に帰国。
立派な殺人である。刑務所位には入っただろう。
然し聞くと、此れは事故で片付けられた。言い訳が眼に浮かぶ。
「何時会ったの?」
「直接会った事は無いです。雑誌を見てた涼子が引き攣った顔してたので、如何した、と聞いたら、なんで日本に居るの…。其れで同僚に、タキガワ コウジって知ってる?漫画家らしいんだけど、って…」
「漫画家?」
「タキガワ コウジ?」
「拓也、知ってるのか?」
「クッソドエスで有名な男だよ。」
漫画家でと云うより其方で名前が売れてる感じ、と井上は続けた。
雪村の顔を唖然と見る井上は、あれが元旦那?奥さん詰んでんな、と今更云った。
「彼を知ってる人は、皆、此の刑事さんと同じ反応します。」
「序でに其奴、左利きだぜ
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