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猫の憂鬱
第3章
―4―
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すよ。」
「良いですね、そう云うのって。」
下手な兄弟より兄弟らしい、と雪村は珈琲を啜った。
「雪村さん、御兄弟は?」
「居ますよ、上に姉が一人、下に弟一人。」
「真ん中ですか。」
「真ん中です。然も姉ですからね、酷いもんですよ。」
「御宅、何でも女の云う事、ホイホイ聞くタイプ?」
「です、です。姉が怖いんでねぇ。」
「判るわ。女は全員姉貴だと思っちゃうのな。」
「其方の刑事さんもお姉様いらっしゃるんですか?」
「性悪なのが一人ね。だから年上の女にガツンと来られると、ひぃ、御免ねお姉様ってなる。でぇも、年上に弱いのなぁ。」
井上と雪村は笑い合い、生憎一人っ子の龍太郎には判らない心理だが、井上の姉、あれだけは怖いと覚えている。序でに自身の母親も近所の女児も怖かったので、女は総じて自分より強く怖い生き物だとインプットされ、結果は此の通り、女に関わらず生きてしまうようになった。
誰が好き好んで魔物に関わるか。
だから龍太郎は未だ独身で恋人も居らず、女が好きではないのだ。父親からはかなり井上との仲を怪しまれているが、此ればかりは仕方がない、母を恨んで下さい、としか言い様が無い。
口を拭いた龍太郎は手帳を取り出し、食べ掛けの餡蜜を横に掃いた。
「奥さんの涼子さん、此方の御親族は。」
「涼子は一人っ子で、御両親はもう居ませんね。」
「そうですか。」
手帳にペンを走らせた。
「調べさせて頂いたのですが、涼子さん、青山涼子と云う画家ですね?」
「そう、だったみたいですね。僕も詳しく知らないんですけど。」
「お父様は、葵早雲。」
「みたいですねぇ。」
「余りお聞きにならなかったんですか?」
「そうねぇ、人の過去は気にならなかったからなぁ。」
早雲が没したのは涼子がドイツに居る時で十年前、母親は、早雲の説明で見た所、涼子が二歳の時に子宮癌で亡くなっている。此の二人が結婚したのは二年前で、そうなると話さないのも普通かなと思える。
「涼子さんの友人関係とか、判りますか?」
「友人ねぇ、居ないと思いますよ。彼女の友達、見た事無いですから。」
彼女の携帯電話が鳴ったのを聞いた事がないと雪村は云い、龍太郎は項を掻いた。
結婚式は挙げず、書類を出しただけ。人が苦手だからと雪村の友人とも数回しか会った事が無い。
画家がどんな人間関係を築くかは知らないが、龍太郎の考える通りの性格だった。
他に聞くとしたら、猫の事しか残って居ない。
手帳から猫の写真を取り出し、テーブルに置いた。
「青山涼子さんは、大の猫好きで有名な画家でした、其れは御存知ですか?」
「何と無くは。」
猫が好きなのは、と雪村は煮え切らない答えで、溜息を飲み込んだ井上がファイルから青山涼子のウィキペディアをコピーした其れを渡した。
「此れ、奥さんの過去ね。父
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