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猫の憂鬱
第3章
―4―
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と計算した。
「ベイビーに宜しく、課長。」
「井上もな。」
腰御大事に、と課長の笑顔に見送られた。


*****


余裕をもって五時半と云ったのだが、夕方の交通量を甘く見ていた。二十分程で着く場所に三十分以上掛かり、今度はコインパーキングが全滅だった。其れを待つのに五分近く掛かり、結果喫茶店に入ったのは五時半を回っていた。雪村も同じ状況なのか、未だ姿は無い。
此れは六時過ぎを覚悟した方が良さそうである。
ココアを二つ注文した龍太郎は手帳を開き、聞く事を纏めた。
「砂糖要る?」
「当然だ。」
置かれたココアを一口飲んだ二人は唇を舐め、シュガーポットから砂糖を投入した。
此の二人、大の甘党であり、木島も其の内の一人、もう一つ云うと、井上が可愛がる五十嵐、此奴も甘党であり、四人で一課の甘党四天王と呼ばれる程の甘党である。
「おい拓也、餡蜜があるぞ。」
「マジか、そらもう注文しねぇと。」
ココアと餡蜜って合うの?何なの此の二人…と訝しむ店員の目等気にせず、最早砂糖の味しかしないココアを二人は飲んだ。
「やっぱココアは甘くねぇとなぁ。」
「ココアじゃないな。」
至極満足と二人は頷き合い、食べ終わる迄来るんじゃない、と餡蜜と雪村を待っていたが、先に来たのは雪村だった。
「済みません、お待たせして。夕方舐めてました…」
何時もは後一時間遅いので交通量は少し減る、一番交通量の多い時間の遅さと云ったらない、と会話を弾ませた。酷く切なそうな顔で自分を見る二人に雪村は首を傾げ、自分の注文を取りに来たとばかり思った店員の手に持たれる物に吹き出した。
「ははは、そういう事か。」
「如何か課長には黙ってて…」
「餡蜜の誘惑には勝てん…!」
「美女が全裸でベッドに寝てるのと同じモンだ…!」
置かれた餡蜜に然し二人は破顔し、雪村は珈琲を注文した。
そうですよね、やっぱりこういう場合は珈琲ですよね…。決して、決して、ココアと餡蜜じゃないですよね…。蟻と罵って下さい。
そう心で呟き、スプーンを口に運んだ。
こんな時でも美味しいんだ、餡蜜。
「あれ、刑事さんも左利きなんですね。」
「そうですよ。」
だから何時も井上が右側に居ます、と龍太郎は説明した。
実際そうだ。
課でも井上の席は龍太郎の右側で、最初は井上の場所に龍太郎の席があった。課長の真ん前、右手側に側近中の側近木島、左手側に三番手の龍太郎…一課権力三角形、と配置決まって居たのだが、井上が配属された時、井上が、龍太が右手に居るのがすっげぇ気持ち悪い、と云った。
自分はずっと、其れこそ生まれた時から龍太郎の右側に居て、龍太郎は自分の左側に居た、だから気持ち悪いと。
其れで今の配置になったのだ。
「もう俺ってばお兄ちゃん思い。」
「生まれた時からずっと一緒なんで
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