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猫の憂鬱
第3章
―3―
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か?」
「何が。」
龍太郎の言葉に自分の結果を否定されたと思った八雲は声のトーンを落とした。
「雪村凛太朗は、週の半分居ないんだぞ?其の状況で、毎日一緒に…其れこそ四六時中一緒に居る雪村涼子の利き手と真逆の場所に居るって、おかしくないか?」
「でもさ、本郷はん、こうも考えられるんと違う?」
雪村涼子は右利き、だから何時も空いてる左側に居る。
そう云われたらそうも思えるが、抱き方は?あの猫は完全に右腕で支えられる癖が付いている。
右でペンを持ち左腕で支えると、一時もじっとせず、ペンを持つ手を噛み、右腕で支えて貰おうとする。逆では縫いぐるみみたく大人しい。
「右腕で抱っこしとっただっきゃないの。」
そういう事は旦那にでも聞けば?と最初のテンションと真逆の態度で電話を切った。
虚しく響く通話終了音を消した課長は電話を仕舞おう…としたのだが、瞬間着信が着た。発信者を一瞥しただけで拒否を押し、其の儘電源を落とした。
構いはしない、如何せ相手は宗一である。
龍太郎に、やっぱり御前の思い違いだっただろう?と云った瞬間、今度は事務電話が鳴り出した。溜息吐いた課長は龍太郎の肩を優しく叩き、やる気の無い態度で通話ボタンを押した。
「はい、此方世谷警察署、捜査一課です。如何されました?」
如何して課長は、外線電話にこうも優しく囁けるのだろう。内線の時はかなりぶっきら棒で、捜査一課、で終わる。此の声聞きたさに暇な奥様方からラブコールもある、其の時の課長の顔と云ったら傑作だ。
顔面は、早くくたばれ欲求不満女、であるのに、声はどんな聖人の声よりも穏やかで優しく、うっとりする。
流石マダムキラー、流石ジェントルマン、ゲイであるのが悔やまれる。
「済みません、聞こえてますか?如何されました?」
「御前…、誰…?」
聞こえた声にブッ…と終了ボタンを押し、携帯電話の電源を入れると鬼の形相で発信した。
「掛けて来るな、此のストーカー!」
「やっぱり御前か…、何あの声、酷…」
「おい、一号(木島・加納)二号(本郷・井上)、生安呼んで来い!もう我慢ならん!」
「課長、課長落ち着いて下さい…」
「喧しい!此れが落ち着いて居られるか!…おい菅原宗一良く聞けよ、今から貴様の名前でストーカー被害届を出すからな。」
「は?何の妄想なん、其れ…」
飄々…と云うよりは、先程の外線電話の声で完全に引いている宗一の声と、課長の声との温度差が激しい。
あの朝の機嫌の良さから一変、ハリケーンが直撃してしまった。
「ストーカーって、大体…そんな暇無いんですけど…」
「喧しい!中学時代からストーキングしくさってからに、良く飽きないな、貴様も!」
「いやそら、中学時代はストーカーやったよ?でも、今はしてないよ…。誰かと間違えてんのと違う…?」
「喧しい!俺をストーキ
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