第3章
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ん!」
「断る。あの中で一番マシなのが斎藤だ。眼鏡が良いなら、もう一人の眼鏡をやろう。」
「要りません、課長の方こそ其方で我慢なさったら如何ですか。」
「ならば逸そ、悪趣味なベンツで俺を轢け。」
電話は何時の間にか繋がっており、スピーカーから楽しそうな笑い声がする。
木島のフェイバリット、侑徒である。
宗一に掛けず、侑徒に掛けた所が又何とも云えない。
「斎藤さん、で、良いんですね?」
笑いで言葉が出ない、目尻に溜まる涙を拭う姿が想像出来る声だった。
「斎藤さん、一課テーブル、御指名ですよ。あはは。」
「有難う御座います、貴方の斎藤、皆の斎藤、斎藤、斎藤八雲で御座います。」
ふぅう、とテンション高い掛け声が掛かり、笑ったのは井上一人である。
貴方の、と云っておき乍ら、皆の、と云っている。井上は其の矛盾に笑って居るのである。
「斎藤は俺の方が良いよな?」
「んー…」
「八雲君…、課長に勝てる要素が、何もありません…」
学歴位しか。後、猫への愛情。
「あー…、二人でしか、選べんの?」
最初のテンションは如何したんだと聞きたい程八雲の声は単調で、後ろから、猫目の坊やは頂いた、ぐはははは、と宗一の声がした。そして、先生セグウェイ返して、と聞こえた。
「貴方達以外でしたら、本郷さんで。」
何故って?一番まともそうだから。
人様から、貴方まともですね、と云われ悪い気はしないが、変人ですねと云われ喜ぶのも居ないが、対戦相手が悪い。
課長からは奴隷の癖にと云われ、加納からはビーエムの癖にと睨まれた。
BMWで何が悪い、悪趣味なベンツで人の下半身を焼こうとした狐風情が。
策か?此れが斎藤、貴様の策か?俺を如何するつもりだ…
八雲から指名され龍太郎は怯えつつ課長の側に行き、本郷です…、と張り付く喉から無理矢理声を絞り出した。
八雲は意地悪く笑い、矢張り、自分を苦しめる策だったかと、胃が如何にかなりそうだった。
「ほんでぇ?何を聞きたいのぉ?」
「猫は、飼い主の利き手で、行動を決める……ぅますか?」
本郷風情が斎藤に生意気な口聞くなと蹴られたので、言い直した。木島の次は課長に胃を攻撃されるのか、此の事件が終わったら辞表でも出そうか、龍太郎は本気で考えた。
「飼い主の利き手で、動物の行動が変わるかぁ?やてぇ?」
そんな事聞いた事無い、と八雲は云い、やっぱり御前の勘違いじゃないか、と課長は云った。
「八雲君。」
「はい、なぁに?」
「此の猫は、常に左利きと居た筈なんです。行動の全てで、人間の左側に居るんです。」
加納の言葉に、でもなぁ、と八雲は言葉を濁す。
矢張り、自分達の勘違いだったのか…?
「そんなん、其の猫の勝手やんけ。左側が、落ち着くんちゃうの。つーか、旦那が左利きやん。」
「其れがおかしいと思わないの
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