暁 〜小説投稿サイト〜
猫の憂鬱
第3章
―2―
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「なんか最近、雨多くないか?」
出勤した龍太郎は少し濡れた額を指でなぞり、井上から渡されたタオルで肩を拭いた。
たった数百メートルを、豪雨でも無いのに傘は差さない。
「課長の機嫌に比例してんじゃねぇの。」
「又何かあったのか?菅原さんと…」
「いや、何も。」
其れならいいに越した事はないが、天気が悪い時決まって課長の機嫌が悪い。課長の機嫌が最高に良いと、天気も阿保みたく良い。雲一つないのだ。
天気が悪いから課長の機嫌が悪くなるのか、課長の機嫌が悪いから天気が悪いのか。
此の方なら、機嫌一つで天気を操れそうだから怖い。
機嫌は、良い。と、思う…。
くるくると毛先を指に巻き付け、床に這い蹲る木島を蹴っている。
此れは何時もの事だ。機嫌良かろうが悪かろうが、木島は課長に何かしら暴力を受けている。勿論、愛情で…。
「何時ものプレイか。」
「打つかって書類落としてる。」
床に散らかる書類を集める木島の頭を足で小突く、というかなり屈辱的な行為だが、木島も其れを見る龍太郎達ももう慣れてしまっている。
此れは機嫌が良い。
本気で機嫌が悪い課長は、理不尽な罵声と共に木島をリンチする。止めたいのだが、止めると今度は此方が二次被害に遭う、余りの怖さに足が動かない、まるでヤクザである。
本気で五階の此の部屋から、御前なんか死んでしまえ、生きる価値のないクズがと罵倒し乍ら、木島を突き落とそうとした事もある。其れで一度、部下への過剰な暴力で一ヶ月謹慎を受けているのだ。暴力所か、殺人未遂なのだが。此の時は一課全員で止めにも入ったし、他の課の刑事迄止めに入った、大人しくなったのは署長の「木島を突き落としたら解雇だよ、其の年で」の一言だった。
まあ、其処迄の機嫌の悪さは、一年に一回あるかないか、ではあるが。
今思い出しても恐ろしく、足に力が入らなくなる。
兎に角木島に腹が立って仕方無く、見るのも嫌になった。更年期障害かな…、と自分を哀れんではいた。
実際更年期障害に依る自律神経失調症と鬱病だった。其処で初めて龍太郎達は、男もなるんだ、と知った。薬を処方されたらしいのだが、酒を控えろと云われたので、飲んでいたかは怪しい。謹慎明けてから暫く、二ヶ月位だったろうか、木島に愛情表現を見せる事もせずノイローゼ状態だったのは覚えているので、矢張り飲んでいなかったのだろう。
課長も課長で、医者の云う事は聞かないのである。医者は碌でも無いから関わらない事にしている、が自論である。だから課長は井上同様、自律神経が乱れている為頭痛持ちなのだ。
男の更年期障害は、老いた肉体に鞭打つような拷問級のストレスでテストステロンが減少し発症する。
木島の顔も見たくないとはっきり自覚している所を見ると、如何考えたって拷問級のストレスを与えたのは木島だ。突き落とされても文句は云え
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ