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猫の憂鬱
第3章
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身体をしっかり宗廣に固定された。
「二百万で売ってやる。」
「ばーかばーか。そんな大金あるか。」
「来年の三月、きちんと卒業したらやるよ。」
課長は意地悪く笑い、又キーリングに嵌めるとポケットに仕舞った。
「えー、今頂戴よぅ。乗らない癖に。カーセックスする為に持ってんの?」
「下品な事云うな。一応お嬢さんだろう。バイクで運べん荷物運ぶ時に使ってるんだよ。」
「一寸待て美麗。若しかして、プリウス持って行ったのって…」
宗廣の唇から色が無くなり、反対に真っ赤な唇が吊り上がった。
慌ててポケットからプリウスの鍵を取り出した宗廣は、二度と返さなくて良い、と其の赤い爪でしっかり握らせた。
「有難う、パパ。だぁい好き。」
切れ長の目を弓形にした美麗は其の儘課長に向き、鍵を肉厚な唇に押し付けた。
「ねえ、其のブルガリのキーリング、欲しいんだけど。」
詰まり此れは、窃盗予告。
美麗の“欲しいんだけど”は、遠回しの“盗むから”である。
キーリング所かバイクの鍵、だけなら良い、本体迄盗まれるの察知した課長は慌ててポケットから鍵を取り出し、全ての鍵を外すと美麗の手に置いた。
「謝謝。」
大きく眉を吊り上がらせた美麗は、鍵をセットすると見事な谷間を見せる胸に押し込んた。
「ほら、帰るぞ。…お邪魔しました。」
「又ねぇん。」
宗廣に背中を押される美麗は、口を鳴らし乍ら辺りを見た。
紫色の瞳、はっきりと龍太郎を捉えると口角を吊り上げ、部屋を出た。
「一寸待て。」
聞こえる美麗の舌打ち。
大股で美麗に近付いた課長は美麗を壁に押し付け、両腕を頭の後ろで固定した。
「本郷。」
「はい?」
「自分の全身調べろ、絶対何か取られてるぞ。」
片足で美麗の足を開いた課長は、美麗の全身という全身を検問し、ジャケットの内ポケット、スラックスのポケットに手を突っ込んだ龍太郎は、ある筈の固形物が無い事に気付いた。
「何時盗った…」
「何盗った、美麗!」
「ビーエムの鍵…、痛いたい…」
「出せ!」
「ガーターのトコ、何でばれたんだ…」
「御前が男に色目使う時は、仕事が終わった時だろうが!」
頭を壁に押し付けた儘スカートの下に手を入れた課長は、云われた場所から車の鍵を取り、しっかりと龍太郎に渡した。
「油断も隙も無いな。」
「済まん、本郷…、何と詫びて良いか…」
「酷い…」
何時盗んだかは判らないが、其れはまあ良いとして、隠し場所。
谷間なら未だしも、スカートの下…。
此れが井上なら舐めて有難がるかも知れないが、生憎龍太郎は有難くない。
癇癪玉が、爆発する所かショックで萎んだ。
鍵を握り締め崩れ落ちた龍太郎を見た木島は、御前良い奴だな、と龍太郎にダメージを与えた美麗を褒めそやした。
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