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猫の憂鬱
第3章
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、痴漢だってある、殺人だって。犯罪が無いなら此の署は唯の税金御殿である。
現に今も殺人が起きており、廊下からヒステリックな女の喚き声や少年達の怒号が聞こえて居る。
折角の雰囲気が台無しになった。

「煩い!黙りなさい!全く御前は!」
「離せ、離せってば!」
「痛い痛い、引っ掻くんじゃない!」

「良いからこっち来い!御前は何回来りゃ良いんだよ!親父さん泣くぞ!」
「母ちゃんだって泣くぞ!」
「何もしてねぇよ!」

微妙に変声した少年と思しき声、狂犬病にでも掛かってるのか?と聞きたくなる女の声。
其の女の声を聞いた課長は閉じて居た目を開き、背凭れから頭を離すとドアーを見た。
「なんか今、不吉な声を聞いたな。」
「ガキと女の声しか聞こえなかったけど。」
後刑事。
井上の言葉に、其の女の声だよ、と椅子から立ち上がり、大きくゆったりドアー迄歩くと、こそっと廊下を覗いた。
「一寸御前、何やってんだ。」
ドアーからすり抜けた課長に龍太郎達は視線を流し、一層喧しくなる女の声を聞いた。
「出て来んな!あっち行けよ!」
「嗚呼、良い所に…、爪で引っ掻くし、蹴飛ばすし、傷害ですよ…」
と三課課長の声。
「喧しいんだよ、御前。今度は何盗んだ。」
「女の心だよーぅ!」
「強姦か、よし、来い。」
「おおう!?違うよ、違う!同意だ!」
女の喚き声が段々と近付き、ドアーが開くと、課長にしっかり首を固定された二十歳過ぎた位の女が現れた。
漆黒の髪、真っ赤な唇、十センチ以上は身長詐称しているであろうヒール、コルセットでせり上がった胸が今にも、ぽろんでは無く、ぼろんしそうである。
目の前を通り過ぎる女の全身から、白檀の匂いがし、余りの匂いに龍太郎は鼻を撫でた。
男でも女でも、香水の匂いが駄目なのである。匂いが駄目で、部屋や車の芳香剤、柔軟剤ですら受け付けない。
「よし、来い、暇だったんだ、遊んでやる。」
「良い、良いよ!遠慮する!」
「強姦容疑だ。後、不法滞在。」
「違う!(ぼく)はちゃんとビザ持ってる!あんた知ってるだろう!」
「何処のジジイ誑かして、結婚した。詐欺だ、立派な国籍取得の結婚詐欺だ。強姦、詐欺、窃盗。御前一人で刑事課勢揃いだな。」
何時になく楽しそうな課長は其の儘部屋にある、簡易取調室に其の女を連行し、足でドアーを閉めると開かないように凭れた。
「出してぇ!」
アクリル板の向こうで女は喚き、其れを見た木島は取調室に近付いた。
其の紫色の目、忘れる筈が無い。
「ミレイ?御前、ミレイだよな?」
「……誰だ御前。」
「レズビアンバーのミストレスだよな?」
「そうだけど…、マスターで良いよ…」
なんだ、レズビアンバーとは。そんな如何わしい、男で全く無縁な場所に木島は入り浸って居るのか。
龍太郎の
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