始まりの時
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は何かの間違いなのだろうか……
「彼女の名前ははやて。八神、はやてだよ」
こんな辛そうな顔を見てしまっては、そんなことを聞くことなどできなかった。
幾つかの問答をしてサラと言われた少女が出て行った後にはグレアムのみが残されていた。ただ、先程は見せていなかった悲痛な面持ちをしていた。
「父様…」
そんなグレアムを気遣うように声をかけたのはリーゼ姉妹。彼の使役する使い魔達だった。
「あぁ、君達か。情けないところを見せてしまったな…」
そう言って力なく笑う姿は見ていて痛々しい。彼の使い魔である彼女達にとっては尚のことだろう。しかし、問いたださずにはいられなかった。
「…父様は、何故あの子にあんな指示を出したのですか?」
はて?何のことかな?
そうとぼけるグレアムに、普段は冷静なアリアが声を荒げた。
「分かっているのでしょう!?最悪の場合、私たちに従うことはないということですよ!」
「ふむ…そうだな」
これまで以上に悲痛に歪む顔を見て、アリアも押し黙るしかなかった。ムードメーカー的な存在であるロッテも口を挟めずにいた。
しばらくの間、静寂が訪れる。心地よさの欠片もない、気まずい沈黙。
それを破ったのはグレアムだった。
「分かっているさ。私のしていることが、偽善だということも。それでも…」
「私は、あの子達に幸せになって欲しいんだ」
グレアムの言葉にアリアが何かを言おうとしていたが、それを飲み込み部屋から退出していった。それに続くようにロッテも出て行き、グレアムのみが残った。先程とは違う沈黙が訪れる。再び訪れた静寂の中で、グレアムはポツリと呟いた。
「君の言いたいことは分かるよ、アリア…この幸せが、仮初めのもので、ほんの僅かな物でしかないとしても……」
「せめて、死に行く前に夢を叶えてやりたいんだ……」
グレアムの顔には、悲しみと決意が現れていた。
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