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猫の憂鬱
第2章
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大きな目を楽しそうに動かした。
「いってらっしゃい。勉強頑張って。」
「ファーティも頑張ってねぇ。」
娘は手を振り、回線を切った時一は背凭れに頭を乗せ、足を伸ばした。タイを緩め、煙草を咥えると宗一が火を点けた。
今の会話、理解出来たのはドイツ語をセカンドランゲージにする宗一だけで、侑徒にも判って居ない。
其の状況が判るからこそ、宗一は敢えてドイツ語で聞いた。
「なんか問題起きた?」
「問題は無いよ、あるとしたら、今回の被害者かな。」
「雪村涼子?」
「彼女の旧姓は青山涼子。」
「え、嘘。」
「本当。さっき橘が調べた。」
ほら、と電話で検索結果を見せ、見た宗一は、ほんまや、と口元を押さえた。
「雪村涼子って、青山涼子だったのか…」
其れは珠子もああなる、と妻がどれ程青山涼子を好きか知る宗一は頷いた。
「敵わんな…」
「でしょ。」
「息子と同じ死に方じゃないか…」
時一は首を動かし、無言で宗一を見、又向こうに向いた。
じっと聞いていた八雲はそっと部屋から出、横にある喫煙室に入ると煙草と電話を取り出し、火を付け乍ら電話を発信した。
五回の呼び出し音、一息着く時間はあった。
「はい、本郷です。」
「科捜研の斎藤です。」
煙草を口から離し、煙を吐いた。
「嗚呼、斎藤さんか。如何しました。」
「青山涼子、検索掛けて。おもろいもん、出るよぉ。先生ぇには内緒よ。」
其れだけ云い八雲は電話を切り、何、折り返し等無い、非通知であるから。
ポケットに電話を仕舞った八雲は硝子張りのドアーに向き、廊下を眺めた。
「御前を蝋人形にしてやろうかぁ!ぐははははは!」
セグウェイに乗った秀一が目の前を通過し、何で聖飢魔II、と眉間を掻いた。瞬間宗一の、其れ以上閣下を愚弄するなら、蝋人形になるのは貴様だ!と云う怒号が聞こえた。
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