第32話 第四次グリニア星域会戦
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ル軍は、今や全軍で以って前線を支えている。
特に第十五艦隊の損耗は著しく、崩壊は時間の問題であった。
と、そこへ1000隻程度の部隊が更に参加していく。
この部隊――第一特殊部隊は第二次グリニア星域会戦で壊滅した第一独立機動部隊の流れを組む部隊であり、同様に全艦が痛艦で構成されている。
その勇猛さはルフェール軍随一であり、アルベインは切り札として切るタイミングを計っていた。
前線に参加した第一特殊部隊は暴れに暴れ、僅か1000隻の少数であるにも関わらず、3000隻以上の帝国艦艇を撃沈破する戦果を上げた。
これには、ミッターマイヤーでさえ唖然となる。
「痛艦隊か……敵として出てくるとこれほど厄介とはな。倒せない敵ではないが、こちらの被害もバカにならん。ここは同様の部隊を当てるとしよう」
「ですが、現在このルフェール侵攻軍に痛艦など――」
「彼らには、アーベ中将の部隊を当てようと思う」
オイゲン・アーベ中将は『戦場の穴掘り師』の異名を持ち、敵味方に――特に男から――恐れられている。
捕えられた捕虜が彼に『アー』される(男限定)ことが異名の由来なのだが、つまりそれだけ敵軍や反乱軍、宇宙海賊を破り、捕えているということの証明でもある。
また、この行動が軍上層部から事実上黙認されているという点から見ても彼の有能さが窺えるだろう。
実際、ホモやゲイが大嫌いなアドルフさえ彼を黙認しているのだから、軍人としての実力は言わずもなが。
次世代の将官で彼に匹敵できるのは、帝国一の邪気眼使いロメロ・フォン・バルタン中将だけであると言われていた。
そのアーベ中将は、自身の専用艦である戦艦ヤラナイカの艦橋で、歓喜に声を上げていた。
「久々の獲物だ! それも生きが良さそうじゃないか。よし、決めたぞ。俺はあの特に派手な艦の指揮官を食うことにする。あの艦だけは沈めるなよ!」
この瞬間、第一特殊部隊の将兵の運命は決定した。
彼らにとって、死ぬことは生きて捕虜になることよりも救いであった。
* * *
――12月8日 9時45分――
この総力戦を制したのは、やはり艦艇数において上回る銀河帝国軍であった。
全軍の三割強を失ったルフェール軍は、それでもまだ指揮系統を維持しながら秩序だって後退していく。
帝国軍も追撃を仕掛けたいところではあったが、彼らもそれなりに消耗していたため全軍の再編を優先とし、追撃を断念。
ここに、第四次グリニア星域会戦は帝国軍の勝利として終結した。
そして、このグリニア星域にて銀河帝国とルフェールが矛を交えることは、以後二度となかった。
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