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猫の憂鬱
第2章
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額から海苔を剥がした加納は以降一切喋らず、秀一は当然、誰の目も見ようとしなかった。話し掛けた人間を無差別に刺しそうである。
其処に、純白の猫を抱いた八雲が現れ、能面兄ちゃん機嫌悪いなぁ、と頭を撫でた。
馬鹿野郎、機嫌(それ)に触れてはいけないし、(そこ)にも触ってはいけない、と皆思ったが、八雲の抱く猫を見た加納は頭に乗る八雲の手に眉を歪ませ、猫の手を握った。
「今日は、コタちゃん。」
「まー。」
「良かったなぁ、コタ。馨ちゃん居てたなぁ。」
八雲と行動を共にする猫、名前は小虎太郎(こたろう)と云うのだが(ここたろうでは無い)、人間には理解し難い、加納を気に入っているのだ。
そして此の二人、何時の間にか親密な関係になっており、宗一でさえ知らない、龍太郎が教えろと何度云っても教えなかった八雲の電話番号を知っているのだ、然もメールアドレス迄。
互いの呼び方も、本の数日前に会ったばかりなのに、ねえ八雲君、ねえ馨ちゃん、である。
気味悪い事此の上無く、狂言を見ている気分だった。
加納の交友関係に全く興味無い課長は綿棒で耳掃除をし乍ら聞き流し、誰が一番最初に説明するんだ、と椅子に座った。
「じゃあ俺から。」
八雲からファイル受け取った秀一がホワイトボードに向き、ファイルの中から一枚写真を取った。
「和臣、此れ何に見える。」
「葉っぱ。」
「植物名を答えて欲しいんだが。」
「そんなの俺知らない。」
椿と牡丹の違いも判らない男に何を期待して居るんだ、と何故か偉そうである。
「緑の葉っぱ。」
「葉っぱは大体緑だな、葉緑体が死滅しない限り。」
(よもぎ)だよ、其れは。」
「へぇ、此れ蓬なんだ。課長物知り。」
興味無さそうに木島は答え、秀一はもう一枚写真を見せた。
「致死量凡そ二ミリグラムのアルカロイド系アコニチン、自然植物界最強の猛毒を持つ、此の美しい青紫の植物名を答えなさい。」
秀一の手から写真を取った課長は、冗談だろう、何でそんな物が出て来るんだ、と呟いた。
「課長は主席で通過です。次に続きたい生徒は。」
「はい。」
「はい、フレンチポテト君。猫は置きなさい。」
「お断りします。」
丸めたファイルを耳に当てた秀一は人差し指を動かし、猫を抱いた侭近付いた加納はトリカブトと答えを云った。
「……チッ…、御見事だ、伊達に禿げてない。次。」
「はい!」
「はい。ええと君は誰だ。」
五十嵐(いがらし)です!イノさんの犬です!」
「はい五十嵐君。」
「済みません、俺も良いですか。小野田(おのだ)です。本郷さんの犬です!」
そんな自己紹介するんじゃない、と飼い主の龍太郎と井上は思った。此れで外したら恥ずかしい所の騒ぎでは無い。
席の遠い五十嵐と小野田に近付いた秀一は其々から答えを聞き、小野田は正解したのだが
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