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猫の憂鬱
第2章
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、意識剥奪になり……、力の無くなった身体は椅子を倒す。ほんで、絶命する。犯人は、えげつないサディストや。下手したら、其の様見とったかもな。」
「見乍ら自慰の一つでもしてたかも知れない。…気が合いそうだ。」
「其の可能性は高いな。えげつないサディストやもの、死ぬ迄ずっと、見てたかもな。」
「プレイ中の不慮の事故、で済ませられたら良かったんだけどな。けど其れじゃ済まされない、なんせ殺意が胃の中にある。」
「えげつないサディスト、か。」
カップを洗った課長は新しく珈琲を淹れ、口に付けようとしたが、喉乾いた、と全て宗一に飲まれた。怒号を飲み込むように課長は目と口を結び、絞り出すように唸った。
「犯人は、宗じゃないのか…?ん…?」
歯が砕けそうな程噛み締め、歯軋りを繰り返した。
「は、何で。そんなら貴方でしょう。」
「誰がえげつないサディストだって…、誰が。」
「珈琲カップ持って歯軋り繰り返してる、三つ編みの貴方。貴方程サディストな男、そう居らんと思うの。」
「じゃ、井上だ。俺以上のサディストだぞ。私は真性ですと、プレート掲げて歩いてるような男だぞ。」
「何で。俺、無関係よ。やだー、怖い。」
咥え煙草で黒目動かす井上は、浴びせられる不信感持つ視線に、サドであるのは認めるけど、と木島を見た。
「こういうタイプのサディストは木島さんだろう?」
「は?俺、サドじゃないよ。」
「だって、課長。」
「木島は究極のマゾヒストだ。俺に虐められ喜ぶ変態。」
「ほぉら!課長が云うんだ、間違いない。」
「認めたな、よし。」
横に居る龍太郎とグータッチし、此れからは心行く迄罪悪感無く木島を虐めよう、と喉奥で笑った。加納も加納で、其の時は是非お呼び下さい、と視線を木島に流した。
「俺も喚(ヨ)ばれるぞ。」
「一人で此の量は無理だ、死んでしまう。心が。」
「良い事じゃねぇか。な、龍太。」
「イエイ。紅白の熨斗で香典持って行きます。」
「俺、井上に対して何かしたか?」
「いいや、でも。」
大事な大事な龍太郎様を虐めたから、と井上は肉厚唇を歪ませ、胃が痛い、と吊り上がる目で龍太郎は見下した。
「もう治ってるだろう?」
「いいえ、貴方が死なない限り治りません。貴方の其の邪悪さに胃が痛むんだ。」
「人を虐めるなんて最低だぜ。ですよね、課長。」
「嗚呼、最低だ。人を虐めるなんて頭がおかしいんじゃないのか、同じ人間とは思いたくない。こっちを見るな、畜生風情が。地獄に帰れ。」
其処迄云われ、龍太郎みたく胃に異常を来さない辺り、根性は頑丈なのだろうと宗一は笑いを堪え、八雲も笑って居た。
肩に猫を乗せた八雲はホワイトボードの前に立ち、全てを消すと妻の残した便箋の拡大コピーを貼り付けた。
「本郷さんが調べてくれて通り、妻は右利きや。ほんで此れが押
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