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猫の憂鬱
第2章
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床に寝られるのも邪魔極まりないと、ガムテープで木島を椅子に固定した課長は秀一を見た。
「セグウェイは無いのか?今日。」
「先生に、此処で乗ったらあかん、て云われました。」
何故?と聞くと、貴方が憤死をする前に俺が死ぬから、と訳判らぬ理由を云った。
歌が下手な事位、自分自身が一番良く知っている。そして、怒らせて良い人間と悪い人間が居るのも判る。
課長と宗一は正に秀一の全人生の中で怒らせてはいけない、唯一傅く人物である。
宗一を怒らせたら精神病院に戻され、一生世間には出られない。課長を怒らせたら人生其のものが終了する。病院に帰る所か土に還る。
俺はサイコパスじゃない、善悪の判断位存在する。あの精神科医は信じて居ないみたいだけど…。
秀一はニッコリ笑うと課長を引き攣らせ、置かれた珈琲に口を付けた。
秀一を従わすのは、危機感でも恐怖感でも無い。
信頼……唯其の一言に尽きる。
宗一は自分を信じ、自分をあの場所から出してくれた。話を聞こうともしない人間の中で唯一耳を傾けてくれた人物。
課長も同じだった。秀一を見、たった一言、此れ又毛色の凄い猛獣を見付けたな、調教のしがいがありそうだ、そう云った。云って、真紅の液体を喉に流した。ライオンが血を飲むように。
猛獣を調教するのに必要なのは鞭じゃない。かと云って愛情でも無い。信頼関係、其れに尽きると課長は云った。
恐怖を与えれば不信感しか持たない、愛情を与えれば甘えしか出ない、絶対的な主従関係は信頼で出来る。何で狼がアルファに従うか、絶対な力があるからだ、即ち其の力とは、絶対に自分達を守ってくれるという信用がある、だから皆従う。
世の中はサバンナだ。強い者が生き残る。自分に力が無いと思うなら、強い奴に付け。そうして其の力を自分の物にしろ。次の王になるんだよ。誠の権力者に付くのは信頼だ、偽りの権力者にはイエスマンしか付かない。
ワインを流す其の姿は、美しい獅子に見えた。
其の言葉を聞いた秀一は、出された一ヶ月間大人しくしていた。今此処で変わらなければ、自分は敗者になる。此の世の中で生きるには、力が必要だと計算した。
一ヶ月我慢した記念と、秀一のセグウェイを買ったのは実は課長である。百万もする物をあっさり買い与えるなんて御前甘いんじゃないかと課長は宗一に云われたが、信頼を得る為には偶に甘やかさないと、と笑った。
何故セグウェイかと云うと、課長の愛車ZX-11を見た秀一が、漏らしそうな程格好良いと云った。欲しいならやるぞと云ったのだが生憎秀一はバイクの免許を持って居なかった、代わりに何が欲しいと聞いたら、小泉首相が乗ってた変なメカ、と云った。
何だ其れは。一国の首相が乗る変なメカとは一体なんだ、トランスフォームでもする気なのか。
宗一も課長も其れが一体何なのか判らなかったが、秀一が云った、歩く
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