第2章
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堪えていた。
「んふ…っ」
「よしよし、おもろいな。」
「駄目だ…、其れは突っ込んじゃ、駄目…だ…」
「酷いなぁ、御前。能面に加え禿げって、激しいなぁ。身体張ったギャグ、御見事だ。久し振りに笑った。」
拍手をする秀一に課長も龍太郎も限界を越え、木島は其の笑い声を聞き乍らゆったり煙草を蒸し、加納の表情に井上は外方向いた。
青白い血管が青白い額に浮かび上がり、じっと秀一を睨んだ。
「どうもこうも、しておりませんよ。」
「さっき和臣がフレンチポテトの臭いがするって云ったよな。其れ、頭だよ。油分が多いから頭皮が呼吸出来なくて、御前は禿げてるんだ。枕が臭いのも其の所為だ。」
そんな臭いがするのは事実だが、云ってしまった事を木島は後悔した。馨しゐニホヒだね、名の通りに、とでも云ってやれば良かった。
然し誰が思う、秀一がこんな事を云うと。
加納が異動で来てから五ヶ月、誰一人として、例え裏でも、其の事には触れなかったのに。
逸そ清々しい、特に頭が、と云わんばかりの加納の表情に、龍太郎は漸く笑いが収まり、然し課長は未だ宗一から宥められている。
そら貴方には関係の無い事でしょうね、枝毛を気にする程なのですから、と龍太郎は無心で課長を見た。
「長谷川 博士。」
「化学の力で何とかしてやろうか。」
え?と全員思い、如何するのだろうと秀一を追っていたら、白衣のポケットからコンビニのお握りを取り出し、ビニールを取ると辺りを見渡した。
「課長、糊、無いですか?」
「もう止めてんかぁ!課長が死んでしまう!」
「何だろうなぁ…、嗚呼、もう色々何かが見えて来た…、此れが、窮地か…、此れが、真理か…!素晴らしいな、化学って!」
「そうでしょう?幸福の科学よ。」
「いや課長、此れ化学関係無いですよ、落ち着いて下さい!」
「然も其れ宗教だぜ、博士!」
「おい誰か橘さんと時一先生呼んで来い、秀一がしようとするのは物理的宗教だ。」
海苔を糊で付けると云う、最早物理ですら無い。宗教も一切関係無い。
糊は生憎出して貰えなかったが、剥き出しのお握りを頬張る秀一は、其の儘ぺしんと加納の額に持っていた海苔を押さえ付けた。
「暫くしたら脂でくっ付くよ、フレンチポテト。」
「長谷川博士、あのですね。」
「可哀想に、毛髪と引き換えにIQを授かったか。毛根の死滅より頭脳を選んだか、素晴らしいよ。なのに俺より馬鹿で可哀想。俺はふさふさなのに。」
「ですからね、博士。」
「全部差し出せば俺を超えるんじゃないのか?」
「ワタクシは禿げでは御座いません。」
「河童みたいな髪型して何云ってるんだ。あ、御前妖怪か。能面河童。くっ付いたかな。」
「ワタクシは、若干、人より、二十五にしては、毛が少ないだけです。ボリュームが乏しいだけです。断じて禿げでは御座いませ
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