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猫の憂鬱
第2章
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加納は木島を見た。
「課長、部下からの苛めを苦に自殺してしまいそうです。」
「…へえ!赤飯炊くか。」
課長、面白い事が起こると、裏返った声で、…へえ!と関心する。
「和臣って、何処行っても苛められるな。」
「待って待って、其れじゃまるで俺が、ずっと苛められてるみたいじゃないか。」
秀一の言葉に木島は反論したが、課長が、此の中で木島苛めた事無い奴挙手、と云ったら一本も上がらず、逆に木島から苛められた奴、又其れに対し自殺したいと思った奴、と聞いたら、全員が万歳をした。国を上げての万歳三唱である。龍太郎に至っては二本では足りない、其れこそ修羅でも召喚したい所だ。
「一寸待って、皆酷くないか!?何で加納迄上げてるんだ、下げろよ!」
「ベンツが悪趣味だと、批難受けました。ワタクシの心はボロ雑巾で御座います。修繕不可能です。涙で枕が乾きません、何時も生乾きで若干臭いです。」
「悪趣味だろうが、如何考えたって!そんなの知らんわ、御前は臭い。何でか知らんが臭い。フレンチポテトの臭いがする。食欲が増すんだよ、馬鹿野郎。お陰で御前が来た六月から二キロ太ったわ。」
「ほら又、ワタクシの心を、其の汚い靴で踏み躙る。ワタクシの心は粉々です。中年太りをワタクシの所為にしないで頂きたい。」
「眼鏡粉々にするぞ、能面。誰が中年だ。未だお兄さんで通るわ。」
「三十代は立派な中年ですよ、お馬鹿さん。お兄さんはワタクシで御座います。」
なんせ未だ二十五ですから、と加納はせせら嗤った。
どさくさに紛れ煙草を吸っていた宗一は加納の年齢に驚き、秀一迄も驚いた。
「え?能面二十五なの?」
「能面二十五って…」
「怪人二十面相みたく云うなよ…」
「江戸川乱歩な。流石、猫目の坊や。すぱっと出て来る所が凄い、俺も同じ事思った。」
「ナイス。」
木島と宗一は二人で何故か盛り上がり、秀一は加納に近付きまじまじと見た。
「能面、如何した。」
「何がです…?」
秀一の視線の先、目の前で見る龍太郎は、若しや、と思った。
「如何したんだ、本当。」
「ですから、何が…」
「何でそんな禿げてんの?」
矢張りそうか、と龍太郎は慌てて口を塞ぎ、マグマのように噴き出しそうな声を必死に抑えた。
「はい…?」
「はい…?じゃなくて、二十五で其れって、本格的になったら如何なるんだ?」
如何なるもこうなるも、加納にも判らない。
目の前の龍太郎はもう無理だと顔面を押さえ、加納を見ないようにした。
見たら最後、其の頭に笑いが止まらなくなる。
井上はぽかんと二人を見上げ、木島は馬鹿がと唖然とした。流石の木島とて、其処には触れないで居たのに。
「あは…っ」
甘い喘ぎ声、本当に色っぽく、なんだ此のセクシー女優みたいな声、と全員声のする方に向いた。腹を抱え、俯き、課長が必死に笑いを
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