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猫の憂鬱
第2章
―3―
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を片耳に掛けた。
「居ってもええけど、邪魔しなや。」
がーー、と椅子のキャスターを動かし、スライドドアーを閉めた。そして又パソコンの所迄椅子を動かすと音楽を流し、椅子を揺らし乍ら観察結果を確認した。
画面を睨み付ける目元を課長は眺め、そして宗一の全体を隈無く見た。
「…何?未だ居んの?暇か。仕事しなさいよ。」
ドアーに背中を預け、腕を組み自分を見る課長を訝しんだ。
何も云わない課長に宗一は、相変わらず変な奴だな、と取り合わない事にし、白衣のポケットからゴム手袋を出した。パチンパチンとゴム手袋が嵌る音を聞き、課長は目を閉じた。
「…なんで聖飢魔IIなんだ。」
「俺が好きやから。」
嫌いな音楽聞いて仕事はせんやろ、そう宗一は笑う。
「あー、エックスが良えの?」
「違う…」
「エックスなぁ…」
カチャカチャと画面を動かし、ベストが一個入ってる、と云い、後ガガも入ってる、と背凭れを深く倒した。
「ガガ…?御前好きなのか?」
ポップ嫌いな癖に、と云った課長に宗一はじっと視線を向けるだけだった。椅子から立ち上がり、課長に近付いた。其の灰色の目をじっと見上げ、ジャズの方なんやけど、とからかった。
「俺がポップなんて聞くかぁ。」
例え御前が好きでもね、と大きく反り、マスクをきちんと嵌めると其の儘妻の身体をすっぽり覆う布を剥がした。
宗一はマスクをしているので余り被害無いが、直に臭いを知った課長は手で鼻を塞いだ。
「一週間は経ってるからな。冷蔵保存やし、少し進んだな。今日で大学回すし。」
身を屈め妻を凝視する宗一は云い、口元を塞ぐ課長は近付いた。
伸びた白い手、瞬間怒号と共に叩かれた。
「勝手触んな!無知な人間が素手で触って、如何なっても知らんぞ!」
叩かれた手を掴んだ課長は、小さく謝罪した。怒りに細まる宗一の目、マスクの下にある口元は歪んでいるだろう。
「ていうか、ほんま邪魔すんなら帰ってくれ。」
「其奴は、自殺じゃ無いのか?」
「違うからこうして又確認してるんだろ。」
段々と語調が強まり、アクセントが標準に変わって来た宗一に、課長は顎を引き大きな目を向けた。
身体に染み付いた癖。宗一の機嫌を窺う時、決まって同じ動作をした。
「…見てて良い?」
「…結局俺に会いに来たんやないか…」
「違う。」
「違わん。仕事してる俺が好きなんやろ。」
否定せず、俯いた課長は唇を突き出した。
「そぉやって、普段から素直ならかわええのに。」
手の甲で頬を叩くと宗一は薄く笑い、睨み付ける課長にマスクを付けると放置した。
どれ程の時間が立ったか、真剣な目付きをする宗一を見ているとあっという間に時間が過ぎる。
「一時間十分経ったが、課長は憤死したのだろうか。」
十時を回った時計に視線を向けた龍太郎は呟き、木島の肩のマッサージ
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