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猫の憂鬱
第2章
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島が唖然と見ていた(のはしっかり覚えている)。入院先の担当医に、良く此処迄放置出来ましたね、其の根性は素晴らしいです、と嬉しくもない言葉を貰った。
「課長、今直ぐ吐いて下さい。今飲んだ薬、吐いて下さい。」
「馬鹿たれ、頭が痛いんだぞ!」
「頭痛薬で進行が早まります、吐いて下さい!」
吐いて下さい、と云われても吐きようがない。龍太郎の言葉に困った課長は益々頭の痛みを訴え、頭痛持ちに胃潰瘍って、もう最悪じゃねぇか、と井上がとどめを刺した。
「まあ、俺も背中痛いけど。後、お腹痛い。ぽんぽん痛いのぉ。臍の上。」
「拓也、たぁやん。御前のは如何考えたって酒だ。膵臓が悲鳴上げてるぞ…」
「え?肝臓じゃねぇの。」
「酒で肝臓逝ったらもう末期だぞ…」
「じゃあ未だ大丈夫だな、よしよし、今日も飲もう。其の前に肺も逝きそうだぜ、ふへ。」
「御前が四十迄生きたら、俺は百歳迄生きそうだ。」
「何でだよ、五十で死ねよ、寂しいから。十年は待ってやる、其れ以降は待たない。あたしぃ、待つのは趣味じゃないから。」
「判った、出血死で直ぐ後を追ってやる。」
抑に龍太郎、胃潰瘍で入院した時、医者から珈琲と煙草を控えるよう指導受けた筈だが、守っちゃ居ない。
軽度の胃炎を信じたばかりに血を吐いたのだから、医者の言う事は金輪際聞かない事にした。例え胃癌と云われても信じない自信がある。
「其の時は俺が加勢してやるよ、本郷。」
全身の血という血を口から吐き出させてやるからな、と木島は笑顔で云った。
「優しいですね、木島さん。」
「だろう、知ってる。」
上司がストレスで瀕死なのに、何故此奴等は暢気に笑って居るのだ。
課長の殺気に気付いた三人は黙り、加納は暢気に電話を弄っていた。
「一時間で戻って来なかったら、憤死したと思って良い。」
あのジャガーの持ち主に会って来る、思い違いであれば十分で戻る、考えている人物であったら最悪憤死するから、と部屋を出た課長は、内の怒りを粉砕するように靴音を響かせ、地下に降りた。
此の地下に居るのは鑑識、ある部屋は安置室と分析室である。解剖は大学病院でするので基本的に管轄所には無い。
地下に降りた課長は一目散に分析室に向かい、消毒薬の臭いを鼻腔に通した。
純白のスライドドアー、ノックもせず開くと、矢張り思った通りの人物が妻の遺体を前にパソコンに向いていた。
「びびった…、びっくさすな…」
唯でさえ不気味な場所なのに。
「なんで居る。」
「なんでって、仕事してるんじゃないですか。」
純白ジャガーの持ち主…宗一はパソコンから目を離し、椅子を回転させるときちんと身体を課長に向けた。
「なんか用。」
「何してるんだ。こんな場所で。」
「やから、仕事。お前こそなんし来てん。」
俺に会いに来たの?とからかい、使い捨てのマスク
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