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猫の憂鬱
第2章
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の感情。
八雲の目に井上は頭を押さえ、龍太郎が心配そうに横目で見た。
「なぁんて。」
八雲は痛々しい表情を一変させ、ニタニタと笑うと煙草を咥え、天井に向かって煙を吐いた。
「言うたけどぉ、わい、其の女、囲ってるんよな。いっひっひ。如何?如何?しんみりした?わはは。」
八雲さん策士、と八雲は自画自賛し天井に向かい指を鳴らした。
「わいの人生全て策!悪い事も全て策に変える!なぁんで、離婚せんか。彼奴が金持ってるからやないか。わい程策士な男、そう居てないよぉ?」
珈琲を飲み干すと八雲は立ち上がり、魔物でも見るように自分を見上げる龍太郎にウィンクした。ジーパンのポケットからインカムを取り出し、耳に掛けると電話を発信させた。
「ほんなら、本郷さん、井上さん。事件終わる迄、盛大わいの策で楽しんでな。……老師(せんせい)、僕です、八雲ですぅ。今から其方行きますよって。え?やー、ほんま老師意地悪なぁ。わいの本職考古学でしょう、貴方の弟子やないですか。」
夕方又来ます、と八雲は会議室から姿を消した。
此の事件が終わる迄、あの男を相手にするのかと思うと、龍太郎は疲労を覚えた。井上は完全に八雲の言葉に叩きのめされた。
女は月で、男は太陽。
「月が綺麗ですね、とは、良く云ったものだな。」
「良い言葉じゃねぇか。」
宗一の触手が伸びる其処で、唯一宗一の触手に収まらない八雲。
何だか段々と面白く感じて来た。
「恐ろしい男だ。」
「さくっと策に溺れてやろうぜ。」
八雲が望んだ情報、其れを知る為、龍太郎は夫の雪村凛太朗に電話を掛けた。
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