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猫の憂鬱
第1章
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落とし、秀一の身体は跳ねた。
「加納さん…」
時一の声に加納はゆっくり顔を向け、薄く笑うと顎を引いた。
「何でしょうか。」
「…いいえ、何でもありません…」
「そうですか。」
天井をゆったりと眺めた加納は其の侭八雲に近付き、まさか、俺が電気を流した事も知っているのか?と構えた。心の中で何度も、確かにジープは趣味が悪いかもしれません、と思った。
「抱っこ、しても宜しいですか?」
「へ…?」
八雲の抱いている猫を加納は撫でた。
「え、ええ、如何ぞ…」
猫は八雲の顔を見た侭加納の腕に渡り、小さな顔を加納に向けた。
「可愛い。ワタクシ、白い生き物、大好きです。」
「そう、ですか…」
「猫が、一番好きです。暖かくて、柔らかい。」
本当に可愛い、と持ち上げた加納はピンクの鼻先に自身の鼻を寄せ、満足すると八雲に返した。
「ワタクシ。」
「はい。」
「斎藤さんの事、気に入りました。」
「あ、はは…、有難う御座います…」
八雲の警戒レベルがマックスだ、と宗一は感じ取った。此れは木島の時にも見せたが、八雲の目が挙動不審に揺れているのだ。
「先生ェ。」
「うん、帰ろう。邪魔したな。」
セグウェイと秀一を離した宗一は課長に向いた。
「二度と、邪魔するなよ。」
軍配が上がった事を知った課長は嬉しそうに笑い、五人全員が姿を消すと、良くやった加納、高らかに笑った。
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