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猫の憂鬱
第1章
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其れから一切関わらなくなったのだが、十五年後、又関わるとは思わなかった。然も最悪な事に、懐かれてしまった。
二ヶ月前に会った時も、エレ・キ・テル氏から熱烈な挨拶を貰った。全身が痺れる程、熱烈な挨拶を。
科捜研と関わる事を良く思わないのは課長だけでなく、木島もそうだった。
「課長。」
「何だ?」
「本気でさ、署長に話し付けようよ…」
「嗚呼、無職覚悟で行くか。」
「そんなに嫌ですか?俺達が関わるの…」
侑徒の悲しい表情(元からだが)に木島は、橘さんだけなら全然オッケーだよ、と笑った。
「よう、ホモ。」
「やっぱ木島さんホモじゃん。なー、龍太。」
「嗚呼。」
「ち…違う!」
木島、侑徒には何故か弱い。見た目の問題で、女にしか見えない侑徒の風貌は木島の心を鷲掴んでいる。
其れに、だ。
木島より侑徒の方が小さいのだ。
此れが本物の女なら当たり前なのだが、同じ男で自分より低い男が嬉しくて仕方が無い。
「んふんふふぅ。」
「何?」
「ふーふふ。」
「時一先生。」
「和臣は、バイだよ。」
はぁあ!?と木島は椅子から立ち上がり、セグウェイに乗る秀一の胸倉を掴んだ。
「俺が!何時!何処で!御前にバイだって云った!妄想なのか!?或いは願望なのか!?」
仮にバイセクシュアルだったとしても御前に興味は持たんからな、と凄んだ。
「んっふー。」
「だってー。」
「じかふふっふ。」
「自覚が無いだけ。」
「課長、此奴殺して良い?」
「序でに此処の垂れ目も殺せ。」
「橘さん…?其れは一寸…」
「違…、そっちの垂れ目じゃなくて、眼鏡の垂れ目だ。橘は美しいから要る。」
あはは、と一際暢気な時一の笑い声。
木島の横でゆっくりと影が動き、目の前に座る龍太郎は影を追った。
腕組みをした侭秀一を見上げ、目を細めると加納は勢い良く秀一の口元にあるガムテープを剥がした。
秀一の悲鳴に引き剥がした加納以外が縮こまった。
「…に、すんだよ!クソ能面!痛いわ!」
「でしょうね。」
ふふふ、と加納は笑い、御返しです、と云う。
「御返し…?」
「二ヶ月前、ワタクシに、電気を流しましたよね?初対面にも、関わらず、故意に。」
「嗚呼。」
「ですから、御返しです。ふふ、いい気味。」
秀一の白衣を弄り、見付け出したショックペンを薄い唇に寄せた加納はもっと笑った。
人間は、残酷である程美しい顔をする生き物なのだな、と一層美しさを増した加納の顔に龍太郎は思った。
時一の顔から笑顔が消え、秀一ではなく加納を凝視した。
「あー、謝るよ…?」
加納が何をするか判った秀一は云うが、加納は笑顔の侭ペンの真ん中を捻った。
「お馬鹿さん。謝った所で許しません。」
秀一の目が開き、白目剥くと其の侭セグウェイに崩れ落ちた。其の上に加納はペンを
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