暁 〜小説投稿サイト〜
猫の憂鬱
第1章
―2―
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「普段喋らない猫が喋ってた、か。」
龍太郎の報告を聞いた世谷署捜査一課の課長は、偶々解いていた三つ編みに指を滑らせ、背中に流した。
「…全然違う事云って良いですか?」
「んー?」
ブラシを掛け乍ら電話を発信した課長は龍太郎の声と発信音を両方聞いた。
「なんで何時も課長は三つ編みなんですか?」
「可愛いだろうが、三つ編み。」
そうですか、と電話が繋がった為龍太郎は黙り、抑此の方は何故こんなにも自由なのか、気になった。
まさに猫である。
「何ー?」
「宗。」
「おー、聞いた聞いた。首吊りやろう?」
課長が発信した相手は科捜研の宗一だった。
「斎藤さん居るか?」
宗一に用があって電話した、というより、課長は此の八雲に話を聞きたいが為、嫌々に電話をした。
直接八雲に連絡したいが、生憎八雲は科捜研メンバーにさえ番号を教えて居ない。
「居るには、居るけどぉ…」
「変わってくれないか?」
「嫌、て言うたら如何する?」
「あっそう。邪魔したな。」
あっさり課長は電話を切り、続けて発信した。
「はい。」
「橘。」
「ご無沙汰してますぅ。」
ゆったりとした口調、侑徒である。
「斎藤さん、居るよな?」
「はい、いらっしゃいますよ。」
「変わって貰えないか?」
「斎藤さん、モテモテですねぇ。」
八雲に話した言葉が筒抜けた。
「斎藤ですけど。」
「くそ…、相変わらず良い声だな…、負けた…」
「あっはは、大きに。」
スピーカーから出る八雲の甘い吐息交じりの声に、課長のみならずデスク前に居た龍太郎も、何て良い声、と絶句した。
「ほんでぇ、何でしょう。」
「猫の事について聞きたいんだ。」
「あの猫は、ソマリ。中型と大型の中間に位置する猫です。」
だから何故、宗一の時にも思ったが、情報が此処に来ているんだ。
科捜研は、本庁の所有する組織で、各署には鑑識がいる。署で扱える事件に科捜研が出る事は先ずに無い。
此の科捜研と関わったのが二ヶ月前の九月に起きた事件。偶然なのか、其処の宗一と課長が繋がっていた。
其処から事ある毎に科捜研から絡まれている。
今回も其の類だった。
暇なのだろうか、科捜研。
良い事ではあるが。
「普段喋らないらしいんだが、矢鱈喋ってた。…如何思う。」
使える物なら例え親でも使え。
向こうが其の気なら此方も利用する迄である。
八雲は唸った。
「ソマリはアビシニアンの長毛種の事を指すんですけど、旦那が言うた通り、あんま話す事はせん品種ですね。犬に酷似した性格持ってます、基本。猫の中で一番頭がええと断言出来ますわ。思慮深い故臆病。其れがよぅ喋ってた、て言う事は、ママちゃまが死んでる事に相当ストレスを感じて、不安で堪らんで、其処にパパちゃまが帰って来たから、爆発したんやろなぁ。」
「そう
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ