第1章
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声帯を狙う理由は、電気で声帯機能を低下させるのが目的だ。がなり立てるのが煩いので声帯に電気を流す、すると一定期間掠れた声しか出ない。こうなると猛虎も大人しくするしかない。
没収しなさいよ、と皆思うが、没収したらしたで被害が拡散される。
八雲の逆鱗に触れないのが、一番の策である。
宗一を怒らせ、其の宗一が八雲に当たるの位秀一には判る、判るからこそ秀一はコンビニに逃げた。
「又来た…」
ウィーーーンと自動ドアーとセグウェイのモーター音が重なる。
レジに居た店員は此の奇怪な秀一が怖くて堪らない。
何故にセグウェイに乗っているのか、何故に白衣なのか、そして何故に何時も調子外れのX JAPANを歌っているのか。
客も客で、セグウェイで店内に乗り付けた秀一の姿に唖然とし、店員が何度、お客様、其方は店外に置いて頂けませんでしょうか?と云っても、差別だ、御前は車椅子の人間に、其れでかいから外に置いとけよって云うのか?と聞かない。
セグウェイは車椅子じゃないだろう!?と店員は思うが、関わりたくない気持ちが勝った。
「きゃっはは、やっだ、先生じゃあん!」
此の秀一の風貌、十代の阿保には相当受けが良いのだ。何回か秀一を見ている内に向こうが勝手に親近感を覚え、女子高生…所謂ギャル系の気さくな女子に声を掛けられる。
白衣だから、先生。
今日も案の定女子高生に声を掛けられ、籠を持って貰った。
「此れね、此れね、チョー美味しいんだよ!」
「マジやばいって!先生、買っとかないとやばいよ!?」
女子高生集団に勝手に籠に入れられ、レジに籠を置いた。
「ハイライト、ラッキーストライク、セブンスター、ええと…橘先生は…」
「パーラメントですよ。」
「嗚呼、そうそう。」
店員が馴染み客の煙草を覚える、というのは良くある光景だが、知りもしない“橘先生”の煙草を覚えてしまうのも悲しい。何故か秀一、宗一のハイライト、八雲のラッキーストライク、時一のセブンスターは覚えているのだが、侑徒のパーラメントだけ何時迄経っても覚えられない。
「なんでかな。」
其れは屹度、侑徒と煙草が結び付かないからだろうな、と秀一は調子外れの歌を女子高生と一緒に歌い乍ら店内を出た。
「ふぉぉおエバらぁあああ。」
「ふぉおおエバぢゅぃーーーーー。」
因みに秀一、X JAPAN信者である。
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