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Holly Night
――零章――
始動
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そしたら全盲だ、傑作だ。

左顔を隠す為に垂らす前髪を掴んだ男は、何も映さない時一の左目をじっと見詰め、ニヤニヤ笑っていた。

熱いぞ、眼球に電気が来たら。

眉尻に走った痛みと熱さに時一は腕を振り、突き飛ばされた男は愉快、満足、欲を満たした事に大笑いした。
男が呼吸する度時一の息は詰まった。がりがりと息苦しさに首筋を掻き、男は自分を睨み付ける時一に余裕で小首傾げ見せた。

御前も入院したら?悪くないよ、隔離される生活も。

高らかと笑った男は電気を自分自身に流し、不自然に黒目を動かした。

――あんたさ、無能なんじゃないの、薬ちっとも効かないじゃん。
――吐き出してるから効果が無いんだろう!
――おかしいなぁ、さっき点滴打ったのになぁ。昨日も打ったのになぁ。ねえ、何で?此の二年で薬漬けにされたけど、俺の世界は何一つ変わってない。

俺が変わろうと思わない限り、俺の世界は変わらない――男の言葉を思い出した時一は、パソコン画面を思い出した。

拓也の世界を壊す事は、誰であろうと許さん。

自分を睨み付ける三白眼が、頭に浮かんだ。
皆、皆、自分の世界で眠っている。
「早よ押せや。」
急かす言葉に時一はパネルの鍵を開け、中にあるボタンを押すとエレベーターから出た。
「降りる時は連絡して、僕しか動かせないから。」
男の居る病室は完全に外界と遮断され、男に会うにはボタンを隠すパネルを外し、直中で行くしかない。其のエレベーターの前にはアクリル板のドアーがあり、其処に付くボタンでエレベーターをロックする。そして其処から長い廊下を歩いて、漸く男に会える。
透明な分厚いアクリル板のドアー、監視カメラが三台、其処から流される映像を時一は凝視した。
分厚いドアーが大きな音を出し、其れに宗一は、元気やなぁ、と笑い、廊下に座った。
「誰だ御前。」
神経質な声がスピーカーから聞こえた。足を繋ぐ紐ギリギリ迄男は近付き、威嚇の為に投げ付けた本を拾い上げた。
寝癖でうねる前髪の向こうに見える其の蛇のような冷たい眼光、ストレスで唇を噛んでいるのか、薄い男の舌は舐め取った血で赤く濡れていた。
「菅原宗一、外科医だよ。」
「彼奴の兄貴か。」
「ま、そんなトコ。」
「外科医が何用だ、此処は精神科だけど。」
読んでいた場所を一発で開いた男はベッドに座り、水を一口飲んだ。
「一ヶ月。」
「ん?」
「御前を出そうと思う。」
廊下に付けられるスピーカーから時一の声が響き、男が其れに威嚇した。
「黙ってろ、あんたとは話してない。失礼、続けろ。」
本を腹に乗せ、ベッドに足を伸ばした男は宗一の考えを聞き入れる態勢を取った。
「三月下旬に、とある試験がある。御前に其れを受けて貰いたい。」
「其れで?」
「だけど御前は、一生
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