第2章
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親子である。
女が十五歳になった二年前、高校に入学する前に拓也と養子縁組を組んだ。事情が事情で高校に行かないと云った女を如何しても高校、大学に行かせたかった拓也はそうした法的処置を取り、誰に文句も云わせず面倒を見る事にした。
一年に一回だけ会うのは、女が学校の寮に入って居るからだ。本当は一緒に住もうと思って居たのだが、女が其れを拒否した、其処迄拓也を縛るつもりは無いと。然も傑作で、ダディと一緒に住んだらどっちが世話するか判んないじゃん……自分を顧みない拓也の身の回りの世話を女は云ったのだ。
ダディ、自分を大事にしなさ過ぎ!そんな人のお世話なんかしません!
女に云われて初めて気付いた程だった。
他人の命は大事にする癖に自分の命を一番に放置する、助けに行って死んだ人みたい、究極のマゾヒストだよね、そう女は云った。
子供には有りっ丈の愛情と金を注ぐ拓也だが、自分の事になるととことん無頓着、無関心、無執着になる。だからアイロン掛けされていないワイシャツだろうが、スーツが揃っていなかろうが、冷蔵庫が空っぽだろうが、電球が切れていようが拓也は気にしない。
因みに拓也、スーツでは無い。所謂セミフォーマル的な服装で、ワイシャツに時期でジャケット、当然ジャケットとスラックスは対では無くタイも無い。きちんと一式揃ってるのは喪服だけである。
尤も、七年前に一度着たきりだが。
「なんでダディって何時も真っ黒なの?」
「なんで御前も真っ黒なの?」
「ダディが真っ黒だから。」
「やだ何此のファザコン、嬉しいじゃねぇか。三万の予算を五万にしてやろう。」
女は黒目を上げ、拓也の顎を確認すると笑い、腕にしがみ付いた。
「幸せだね。」
「だな。」
拓也はしっかり女の額にキスし、三本目の煙草を消すと立ち上がった。
「又来年ね、お姉様。」
女の額にしたように、拓也はしっかり墓石にキスし、女もしっかり墓石を抱き締めた。
「あったかいわ、マミィ、大好きよ。」
女の伸ばした手を拓也は握り、エレベーターを降りるとミサの終わった静かになった教会を見た。
「如何する、学校迄送るか?」
「近いから歩いて帰る。」
クリスマスの時位自宅に来ても良いんじゃないか?と拓也は思うのだが、女は頷かない。拓也の自宅に行くのは高校を卒業したら、と決めている。所謂大学生になったら、世間からきちんと大人として認められる気がする。其れ迄は如何やっても子供で、故に甘んじてしまいそうだった。拓也が優しい程何処迄も子供になってしまいそうだった、其れを拓也が許してくれるから。
拓也の愛情に頼りはするが甘えたくはなかった。
「ねえ、ダディ。」
「うん?」
「時間って、早いね。」
つい此の間迄十歳だと思って居たのに、次の誕生日を迎えたら十八になる、まさか自分が十八歳になる等とは、十
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