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Holly Night
第2章
―――3―
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話だった。
ずっと喋る子供の手を握る母親の疲れ切った顔と云ったらない、父親と話している間はぼーっと何処かを見ていた。
だよね!ママ!
そうね。
御前、聞いてたか?
いや、聞いてなかった、御免。
駄目だこりゃ、と菅原達は呆れ、笑い、親子を見送った。
唯此の母親、一つだけ良い事がある、表情がかなり豊かで、だから言葉が無くても、会話として成立していた。寡黙に加え仏頂面だったら目も当てられなかったに違いない。
エリコも、母親に問題があると見て、どんな母親か聞いた、矢張り菅原の考え通り、痣の所為で母親から疎まれていた。
代々婿養子、其れも奇妙な話であるし、エリコに問題があるからと云って、孫である亜由美を養女にする理由も突拍子過ぎる。其処迄エリコは母親に嫌われて居た、否定的な考えを持ち、俯き歩く人生なのも納得した。
何でもエリコの痣、父親の弟…叔父と祖父にあるのだ。だからなのか判らないが、痣を持ったエリコを産んだ母親は、叔父との関係をかなり疑われた。祖父にもあるのだから父方の隔世遺伝だと考えれば済む、然し三十年以上も昔の田舎だ、今でも田舎の事情は一世代前だと考えて良い、母親の心労は否めない。
亜由美は其の隔世遺伝を受け、父親と同じに痣を持たず生まれた、此れがエリコの母親…祖母の勝利だった。ほれ見てみろ、エリコはあんたの子じゃないか、と祖母は此れでもかと、婿養子の癖に自分を非難しまくった祖父を罵った。此れで亜由美に迄痣があったら、隔世遺伝所か祖父、叔父、自分、娘の優性遺伝と決まったが。
エリコが面白い筈が無かった。
亜由美が生まれる迄大人しかった性格は両親への鬱憤を晴らすが如く百八十度変わり、怒りはあらゆる物に向けられた。
此奴さえ痣を持って生まれりゃ良かったのに、嗚呼畜生、痣なんて持って生まれたばっかりに。
亜由美に痣があれば、祖母は昔の気迫等無くし萎れただろう、自分に覚えが無いだけでエリコの父親は叔父だと思ったかも知れない。
畜生め、なんでたって見た目も声も似てやがんが此の兄弟は、位思っただろう。
実際祖父から、そっくり過ぎて俺と弟を間違えたんだろう、と云われもした。双子や年子なら未だしも三つ違いの兄弟、自分の夫を間違える妻が何処に居るんだ、と心で思ったが黙っておいた。其の結果が此れだ、祖母の怒りは亜由美を盲愛する事で解消された。
こう考えるとエリコと亜由美は真逆だが、顔がそっくりなのだ。
自分の顔が嫌いで堪らないのに、娘は鏡に映したようにそっくり、なのに祖母から愛される、痣が無いというだけで。
「大嫌いだったなぁ、亜由美、そして自分も…」
だったら何故産んだのか、聞いたら自分を愛してくれた男の子供だったから、真由美が生まれたのも同じ理由だ。


*****


自分の愛し方を知らない人間は、他人の愛し方も判りませ
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