第2章
―――3―
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「如何もせんさ、此奴等は施設行きだからな。唯、何かしら…保護観察義務違反、位のアレは付けてやる、熨斗付けてな。」
「わー、縁起良い。」
課長は封筒を女に向けたが、要らねぇよ、と女は赤い唇を動かしただけで其の儘部屋を出て行った。
パソコンから音楽を流した課長は其の儘ゆったりとキングサイズのベッドに横たわり、三つ編みを解くと瞼を閉じた。
*****
「佐賀に居た頃、亜由美を虐待してたのは何でだ?」
課長の問いにエリコは答えた、自分にそっくりだったから、と。
「私ね、刑事さん、自分が嫌いなの。誰にも愛されなくて、惨めで、如何しようもない女なの。顔だってそんなに良くないし。」
こめかみから額に掛けある痣を隠すようにエリコは手で撫で、髪で隠した。
「其の痣が、御前を狂わせたのか。」
エリコは首を傾げてみたが、そうなのかもね、と手を膝に乗せた。
「地面を見て、生きて来たの。」
生まれた頃からある痣の所為で、髪も短くした事は無く、高校時代迄誰かを正面切って見た事は無い。大学生になり化粧を覚えて初めて前を向く事が出来るようになったが、長年の癖はそう治らず、矢張り俯いていた。
其の視界に入ったのが夫のアツシだった。
「あの人、身長高いでしょう?」
「嗚呼。」
「だからあの人、しゃがんで話す癖があったのよ。」
エリコはそう云うが、同じに長身の課長はそんな風に話し掛けた事は無い。横で聞いていた拓也がキキと笑った。
「昔から年寄り相手にする人だったから、自然とそうなったのね。」
「優しい男じゃねぇか。」
見た目通り。
初めてエリコの視界にきちんと入った異性はアツシが初めてで、驚く事に最初に惚れたのはエリコ側だった。てっきりアツシだと思っていた、性格からして。
アツシと会話する為にエリコは地面を見るのを止め、空を見るようになったが、アツシを好きになる程エリコは又地面に向いて行った。
「私を愛してくれる人なんて居る訳無いのよ。」
何処からそんな後ろ向きな思考が出るか謎だった。
横の部屋で取り調べを観察する菅原は、嗚呼そう云う環境か、とエリコを分析した。
本来なら警察で無い菅原が取り調べを見る事は出来ないのだが、課長が許可を出した。此の儘裁判に流れるとなると、エリコは確実に精神鑑定が入る、其の前に課長は、警察の手が一切入らない状況の見解が欲しかった。
菅原は、母親との関係を見直した方が良いと考えた。誰からも愛されない、と発言する人間の多くは、母親から愛情を貰って居ない。愛情を貰い生きた事が無いから、愛情を貰っても其れが愛情だと認識出来ない。気性が荒いのは母親との関係が不安定だから、と菅原は続けた。
子供の性格は母親で決まると云って良い。母親が性格を作るのでは無く、子供が母親の性格に似るのだ。
おっとりした母親な
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