第2章
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課長は額を掻き、一旦部屋を出た。そして隣の取調室に入り、憔悴し切る如月に聞いた。
「三年前、嫁が出て行った直後、不動産屋から電話が無かったか?」
「え…?」
「御前の戸籍上配偶者は、出て行った三年前に住宅を購入してるんだ。総額二千三百万、現金で一千三百万出してる。」
課長の言葉に如月は、嗚呼!と声を出し、通帳を一つ持って行った、と云った。然し其の残高は四百万程で、其れで娘が生活出来るなら良い、と如月は何も云わず、全額引き落とされた直後凍結した。同時に娘の保険も解約され、其の返金額が五百万だった。然し此れの契約者は母親で、郵便局から届いた書類で初めて、妻が娘に保険を掛けているのを知った。
そんな暢気な男なのだ。
「九百万…、後四百万足りん。」
「四百万位なら、エリコさん持ってます。」
「何でだ?」
「如月家はあっこ等周辺の地主ですけん。エリコさん、お嬢様なんです…」
「良く結婚出来たな。」
「僕の名前ば見て下さい、僕は婿養子。亜由美が出来とやけん結婚出来たとです。」
「成る程な。実家に電話が行ったか。判った有難う。」
課長が出て行った後木島は如月に向き、御前婿養子か、と聞いた。
「そうです、やけん離婚せんかった。御義母様が、絶対に離婚するな、亜由美迄居なくなったら此の家は如何なる、って。如月家は代々婿養子ですから。御義父様が亜由美の事大好きだったのもあります。其の事情知ってる上司…嗚呼さっきの人です、が離婚届不受理申出しました。実際何回も離婚届出されとぉし…」
僕、何かしたかな、と如月は項垂れた。
「嫁が出て行ったのは、児童相談所が鬱陶しいからって聞いたんだが。」
「嗚呼、其れもあるね。」
「其れもあるね、って、御前知ってたのか?」
「ええ。エリコさん、毎日何かに腹掻きよらす人でしたけん、僕も毎日殴られとりました。其れに僕と結婚したとが亜由美が出来たからですけん、亜由美が嫌いで堪らんかったとです。」
呆れ果て、口が塞がらなかった。気弱にも程がある、いいや違う、問題から逃げ続けるタイプなのだ。
「僕が居ると僕を殴って、僕が居ないと亜由美でした。」
「そんな女が何で娘連れて出てったんだ?」
「遺産や権利が全部亜由美に行くからです。置いて出て行ったら、亜由美は御義母様達の養女になるし。次問題起こしたら養女にするって云われた直後に出て行ったとです…」
「何の問題起こしたんだ?」
「妊娠しとったとです。」
僕の子供ではありませんが、と如月は無表情で云った。
「其れが、真由美?」
「真由美って云うとですね、幾つ?」
「今度の一月で三歳だよ。」
「嗚呼、じゃあ其の子です、計算合いますばい。如何にもこうにも隠せんごとなった十月位に出て行きよらしたから。」
置かれたお茶を一口飲んだ如月は木島に向いた。
「……亜由美
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