第2章
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入られたな。」
床に向かい呪詛垂れ流していたヘンリーは、拓也の其の言葉に顔を上げ、外方向き離れた課長を目で追った。
「素直じゃないなぁ。」
ニヤニヤと、真由美と一緒にツリーの飾り付けで遊ぶ課長の腰を後ろから抱き締めたヘンリーは、背中に顎を突き刺した。
「おい井上、痴漢だ。現行犯だ。」
「良いね、最高。あったかい…。人肌に飢えてたんだ。」
英語の判らない柳生からして見れば、誠奇怪な流れで、何で抱き付いてるんですか!?と本郷に聞いた。
「おこっちゃだめよ!わらうのよ、かちょーさん!」
真由美に仏頂面の頬を引かれた課長は、はいはい、と薄っすら笑った。
真由美が離れないのは判る、が何故に何時迄ヘンリーがくっ付いているのか判らない。背後霊か何かだと思う事にし、課長は真由美と積み木で遊び始めたが、矢張り鬱陶しかった。
「離れてくれないか…」
「嫌。」
「井上、助けてくれ…」
「懐かれましたね、可哀想。」
クリスマスなのに、と課長は項垂れ、然し真由美が、邪魔よ!あっち行くの!ハウスよハウス!とヘンリーに云ったので、背後霊は仕方無く退散した。
「邪魔って云われた、拓也…」
「ま、邪魔だろうな。」
「なんでだい…」
真由美はすっかり課長がお気に入りで、同じにするのよー、と髪の毛を三つ編みにして貰い、一緒よー、と今度は真由美が課長の髪を三つ編みにした。
「お、上手いな。」
「真由美ちゃん、お人形でずっと練習してたんですよ。」
言葉を待つように黙って職員を見ていると、嗚呼やばい、と拓也が云った。
課長の灰色の目でじっと見られ、落ちない女は居ないのだ。
唯、課長の落とす対象は男で、故に無意識に何の考えもなくじっと見詰めると、そうやって唯々純粋に見られる事に慣れない女達は落ちて行った。
真由美が実際其れで落ちているのだ。
加え真由美に対しては、女に向けられない愛情がある。
「えっと…」
「何で、練習するんだ?」
そうしてじっと、瞬きをするかしないかの瞼の動きで見詰められ囁かれ、落ちない女が何処に居る。九割の確率で落ちると云って良い、気付いた拓也が現に実行している為、其の威力を知っている。
女を口説く時は、一瞬たりとも目を離さず囁き落とせ――。
因みに課長が今笑って居るのは、真由美のいじらしさにだ。
判っているのだ、課長だって、真由美が何故三つ編みを練習するか位。
「課長さんに…会ったら…するんだ、って…」
職員の目が課長の目に吸い込まれる寸前に課長は顔を真由美に向けた。
すげぇテクニシャン。
拓也が気付く位なので、ヘンリーも課長のテクニックに当然気付いている。
「口説かれたい…」
猛烈に口説かれたい!と小声でヘンリーは繰り返し、額を壁に打ち続けた。
「又現れたな!妖怪め!」
「妖怪暴れん坊め!」
「おおっ
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