第1章・一年前
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たが、父親の現住所を調べるにも役所は閉まっている、もう帰る、と木島もパソコンを持ち帰宅した。
町田の事は少年課が調べると云ってくれた。
一人一人帰宅し、残ったのは当直と拓也と本郷であった。溜まった灰皿の中身を捨てた本郷は、帰るぞ、と拓也の肩を叩いた。
帰る積もりはなかったが、課長も帰ってしまい、誰も仕事する気無さそうなので、そうだな、とパソコンをスリープにした。車が無い今、課長や木島の様にパソコンを持って帰るのが重たく、面倒なのだ。本郷は元から持ち歩く習慣が無い。
「明日如何する?来るのか?」
マンション前で拓也を下ろした本郷は其れと無く聞いた。
「いいや。明日はサンタしなきゃ。」
「御前、車無いだろう。」
「あ、そうだよ。しくった。」
毎年拓也はクリスマスの日、支援する養護施設の子供達全員にプレゼントを送る。他には三月にランドセルを人数分送る。
「町田ぁ、ぜってぇ許さねぇ…」
「付き合ってやろうか?」
「あんら、龍太郎様ってば、やっさすぅい。」
「…気持ち悪い。」
「良いよ、ヘンリー使うから。」
ヘンリーも拓也以上に子供が好きで、そういう活動をしてると拓也が云ったので手伝っている。なので毎年、トナカイ二匹で施設に行っていたのだが、全部入るだろうか、と其処は考えた。
出処不明の六人、其の一人が馬鹿でかい兎の縫いぐるみを希望したのだから。
「柳生さん使えば。」
「頭良いな御前。」
柳生なら喜んで車を出してくれそうだ。
挨拶済ました拓也は静かなエントランスに靴音を響かせ、エレベーターに乗り込んだ。
「節子。俺。」
エレベーターの鏡に映る自分を見た拓也は、其の目を見たくないが為目を閉じた。
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