第1章・一年前
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あれが此の住所だ。名前は町田サトシ。ほんで此奴、何回も免停食らってる。今二十二歳。」
其の言葉に拓也はジャケットから電話を取り出し、亜由美に画面を見せた。
あの事故の時、破損した車体を取った時、偶然“町田”という其の男が映ったのだ。
町田の顔を拡大し見せると亜由美は
「あ、お兄ちゃん」
と筆談少女にも見せた。筆談少女も少し音を出し、お兄ちゃん、と云ってる風だった。
拓也は無意識に口角が上がり、此れお兄ちゃん、と課長に電話を投げた。
かしゃん。
電話はホワイトボードに激突した。
「何で避けんの…?」
「まゆに当たるだろう。」
大きな手で真由美の顔を防御していた。
「頑丈な電話だから良かったけど、iPhoneだったら死亡だぜ…」
「iPhoneみたいな軟弱なら受け取ったさ。…多分。」
床から電話を拾った課長は、此れは酷い、と腹から笑った。漏れなく車もダサい、とも。
「まゆ、此の兄ちゃん知ってるか?」
「パパよー!」
真由美は小さな手で電話を持ち、嬉しそうに笑うが、課長の絶望し切った表情と云ったら無い。
「まゆ、悪い事は云わん、俺をパパにした方が良いぞ。な?姫扱いしてやる。」
木島が居たら腹から笑いそうな言葉である。パパ、課長がパパ、ゲラゲラゲラ、と。そしてど突かれると云う流れも想像出来る。何故居ないんだ木島さん、と本郷は悔しがった。
木島が課長にど突かれかり八つ当たりされるのを見るのが本郷、職場での唯一の癒しである。
「お、良いね。じゃあ御前は俺の所に来い。」
膝に乗せる筆談少女に拓也は云い、本当に適当に云うな此の男共、と本郷は呆れた。
「今其の車、こっちが保管してんだけど見るか?引き取りに来ねぇんだよ。イノの車もあるぜ。」
「俺のはもう処分して良いぜ。」
署に軟禁されてる時、新しく納車契約したから、と。
「又御前税金使う!警察が処分すると税金なんだよ!」
「良いじゃん、税金なんて使う為にあんだぜ。使う為に徴収してんだろうが。」
「そして還付された自動車税を懐に納めるんだな、把握。」
「いっひっひ、悪いねぇ。悪代官めぇ。」
「オメェが悪代官だよ!で、課長さん、見る?」
「一ヶ月だろう?危ない物ならもう見付かってるだろう、無いって事は無い、時間の無駄だから見ない。」
「ま、も一回見てみるけどな。なんか出たら持って来るわ。廃車通告送ったし、ひっくり返すわ。イノの車は部品取りでディーラーに送って良いんだな?」
「良いよ。」
判った、と交通課の刑事は去って行き、続いて珍しい課の刑事が姿を現した。
「少年課だけど。…何で子供?」
「何か用か?煩い。」
「町田の事で来たんだけど。情報要る?五万だ。」
「帰れ。」
「嘘嘘。入って良い?」
此の町田と云う男、どれだけ警察の世話になれば気が済むのだろう
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