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Holly Night
第1章・一年前
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署に着いた拓也は会議室迄向かい、其の状況に唖然とした。興奮しきった課長がホワイトボードをバンバン叩き乍ら、緩んだ三つ編みを揺らしていた。
其の前の廊下に、子供が溢れていた。全員身なりが良いとは云えず、児童相談所職員や余っている婦警に毛布に包まれ抱かれていた。
「課長、来ました。」
拓也の声に誰よりも先に木島が反応し、殺されてしまう、と助けを求めたが、拓也は其れを一瞥するだけで取り合わなかった。
木島が課長に八つ当たりされるのは何時もの事で、木島にしか耐えられない事でもあった。
「…嗚呼。」
血走る目を拓也に向けた課長は、拓也を見るなり一瞬で殺気を無くし、椅子に座り込んだ。
「良かった…、救世主が来た…」
「何があったんです。」
眼鏡を外し、目元を塞ぐ課長は鑑識班から現像された写真を机に流した。
薄汚い部屋の写真、生活感がまるでないが、妙に生々しかった。
写真は一軒家で、通報したのは其の家の管理会社だった。半年のローン未納で何回か足を運んだが誰も出ず、そして昨日、子供が出た。然し親は居ないと云った。真っ暗な事を不審に思い、電気とガス会社に確認すると支払いが無いので停止していると云った。君一人なの?と聞くと首を振り、何だ居留守か、と懐中電灯で照らした管理会社の職員は腰を抜かした。
どんなホラー映画よりも怖かった。
真っ暗な廊下に子供が何人も座って居るのだ。
職員の悲鳴に向かいの住人が何事かと飛び出し、あれ、あれ、と向けられた懐中電灯の先に又絶叫した。

――何!?なんなの!?なんで子供ばっか居るの!?此の家如何なってんの!?
――知らないよ!変な夫婦ってのは知ってるよ!
――け…警察…そうだ、警察…

職員は怖さに又ドアーを締め、警察が来る迄の間向かいの家で待機して居た。
警察が到着し、6LDKの家から出て来た子供の数は八人で、最年長で十一歳、最年少で軈て三歳だった。
最初警察も管理会社の職員も向かいの住人も、子沢山、としか考えなかったのだが、顔が全く似て居らず、最年長の子供が云った一言で状態が急変した。

誰がお仕事行くの?

何の事か判らず居ると鑑識が見付け出した痕跡に今度は、一課に声が掛かった。
庭に変な掘り返し痕があり、鑑識が掘り起こすとビニール袋に収まった赤ん坊の死体が五体出て来た。一番新しいと思われる物でも白骨化して居た。

何なんだ、此れは…

電気会社に連絡し、通電して貰い見た部屋は悲惨だった。
何時から電気が止まっているかは知らないが(電気会社曰く十一月下旬に止めた、だから一ヶ月前位ですかね)、冷蔵庫の中は空っぽで、リビングはゴミだらけ、真冬だったから良かったもの、此れが真夏なら異臭と虫騒ぎだろう、発見された子供達は一ヶ月其処いらの細さではなく慢性的に食事を摂って居ない細さだった。
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