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Holly Night
第1章・一年前
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要らねぇよ。此れ以上顎に愛情貰ったら、整形科医の世話なるわ。」
菅原はクスクス笑い、拓也の観察を知れず続けた。
酷い濁った目。
視線が合うと菅原は又笑った。
何だ此奴、気持ち悪りぃ…。
拓也の菅原に対する印象は其れだった。
会議室に入るものだとばかり思っていた菅原は、拓也の行動に、へえ、と目を大きくした。
「よっし、御前等。今日何の日か知ってるか?ん?」
廊下に居る子供達に拓也は話し掛け、一人一人の顔を大きな手で包んだ。一見すると触れているだけなのだが、此れは目の状態と顔色、触れられた時の反応を見る行為だった。全員を見た拓也は柳生に目配せし、大きく腕を広げるとしゃがみ、目線を子供達より下にした。
「知らない。」
「おいおいマジかよ、今日はイヴだぜ。サンタが来る日だぜ。」
「サンタって何?」
「何?美味しいの?」
「サンタクロースは食べ物じゃありません。マジかぁ、サンタを知らねぇのか。サンタってのはな、御前達みたいな、可愛い良い子に、欲しいもんくれるすっげぇリッチなおじさんだぜ。」
「井上さんですね!」
「俺は、お兄さんだ、二十代だから。でもサンタを知らねぇのか。」
「兎のぬいぐるみ欲しい!すっごいおっきいヤツ!」
「オッケ、サンタに伝えとく。でっかい兎な?」
一人が云うと次々云ったが、一人だけ黙った侭の子供が居た。
「ん?御前は?」
聞くが少女は答えず、口は開くのだが言葉は出さなかった。拓也の細い目が窄まり、口元を見ると高く抱き上げた。
「恥ずかしいか、じゃあ、こっちでこそっと教えて。」
「ずっこい私も抱っこよ!」
「節子!」
「はい!さあいらっしゃい!」
「ボンボン痛い!」
「がーん。愛情で硬いのに…」
整髪料或いは中に仕込んだピンだろう、と本郷は俯いて笑った。


*****


会議室のテーブルに少女を乗せた拓也は小さな手を見乍ら前に座った。すると少女はスカートを捲り、細い太腿を拓也に見せ付けた。
「ワァオ、刺激的。」
云ったが拓也の心はナイフで抉られるより傷を負った。
「判った判った。」
スカートを掴む少女の手を持ち、此れ以上破廉恥な行為に及ばないようしっかり握った。
「良いか?俺と同じ事しろ?あ。」
云って拓也は口を開け、続けて、い、と口角を横に伸ばした。
「おい先生。」
「はい?」
向かい側で診断書を作る菅原は目を上げた。
「何で此奴、歯がねぇんが。」
「え?」
椅子から立ち、少女に向いた菅原は下から覗き、一寸御免ね、とゴム手袋をした指で口内に触れた。
「歯茎が腫れてる…」
「おいおい御前、幾つか知らねぇけど、もう歯槽膿漏で歯が無くなったのかよ。」
「あ、一寸、止めて…!」
菅原の高い声に拓也は驚き、駄目駄目と菅原の腰は逃げた。
歯茎に触れていた菅
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