第1章・一年前
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た…!」
電話の向こうが煩い程、自宅の静寂が際立った。
「もう大変なんだよ!」
「如何した、おい何があった。」
「柳生さんから電話着てるだろう!?俺には上手く状況が説明出来ん、なんか良く判らんが子供が如何とかって云って、興奮してて良く言葉が聞き取れないんだ。課長!?課長何処行……嗚呼クソ、切るぞ。」
無機質な切断音が静かな寝室に響いた。
「節子!」
「井上さん!」
何時も凛とした声を出す柳生の声なのか、其の切羽詰まった声に拓也は煙草を咥えた。
「おい、何が起きた。」
「酷い、酷過ぎます!」
「だから何があったんだよ!」
「子供の死体が一杯あるんです!」
全身に鳥肌が立ち、言葉が上手く理解出来なかった。
其の時一号機が鳴り響いた。
着信、課長。
柳生の電話を其の儘に拓也は通話ボタンを押した。
「もしもし…」
「出て来るか?本意じゃないがな…」
ずっしりとした課長の低い声に、電話越しでもはっきりと怒りが判った。
「何が起きたんですか…」
「違法売春だよ。」
「は…」
「冗談じゃない…、冗談じゃない!!」
課長の怒りに拓也は火を点ける事忘れた煙草を口から落とした。
「課長…?」
「唯の違法売春じゃない、全員子供だ、一桁のな!こんな事が許されるか!」
「え…?」
「出て来るんだよわんさかな、子供の死体も!」
「え?何?」
「課長、課長落ち着いて下さい!」
「嗚呼!頭がおかしくなりそうだ!」
怒りに叫ぶ課長を宥める本郷の声がする。一体何が如何なってるのか、全く判らなかった。
「龍太、おい龍太!」
「課長がもう怖い!興奮しきったライオンみたいだ!俺、殺されるかも知れん…、木島さんは死んでる。めでたい。」
一方的に電話は切れ、柳生に声を掛けた。
「えっと、今の状況知りてぇんだけど。流れじゃなくて。」
「ええと、課長さんが興奮して机蹴ってます…」
ガンガン聞こえる音は其れか、と落ちた煙草を咥えた。
「木島って刑事は何してる?」
「木島さん…?ええと…誰だろう…」
「ボブカットの色白チビ。アヒル口で邪悪。」
「嗚呼!あの人か!ええと其の方は、…課長さんに八つ当たりされてます…、其れを本郷さんと他の刑事さんが必死に止めてます。」
「課長は其の儘で良い、彼の方は一度切れるともう止まんねぇんだよ。龍太に迎えに来いって伝えてくれるか?車無いんだわ。」
「判りました、一寸待って下さい。」
柳生が伝えると三十分で行く、と返事があり、電話を切った拓也は女の残したメモの後ろにペンを走らせた。
御免、今年も一人にして御免
メモから中々手が離れず、強く目を瞑った拓也は振り切るように手を離しバスルームに向かった。頭から熱いシャワーを浴び、状態を懸命に考えた。
子供…、死体…、売春…?
レースの
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