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Holly Night
第1章・一年前
―6―
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「何で?」
「なんか違う感じがしたから。」
嗚呼、と女は上目で唸り、目を閉じた。
「拓也が居なかったからよ。」
「俺が?」
「私、煙草吸わないから。」
「嗚呼、だからか。」
自宅なのに自宅で無いと感じたのは其の所為だったのかと身体を離した。
「此の家はね、私と拓也で出来てるのよ。」
「艶っぽいじゃないの、お姉様。」
「私の匂いと拓也の匂いが混ざって、初めて呼吸をするの。」
「やぁねぇ、お姉様、イヤらしいわ。」
花の匂いに混ざる煙草の匂い、嗚呼、自宅だ、と漸く拓也は安心した。一息にビールを飲み干し、煙草を消すと冷たい指先を女の唇に当てた。ねっとりとした熱さが指先に絡み、血液が溜まった。其れを知った女はするすると布団の中に潜り込み、暖かい体温を拓也に教えた。
「嗚呼、そう来る…」
布団の中を覗き、一度笑うと手を離した。ヘッドボードに預けていた背中をベッドに預け、布団の中で蠢く女の髪の柔らかさを指の全てで堪能した。
「お姉様、眠たいわ。」
「拓也、イヴだって事知ってる?」
は?と拓也は、充電される電話を見、身体を起こした。ディスプレイには、12月24日 0:36とある。
「うわマジだよ。って事は今日…いや昨日か、祝日だったのかよ。」
「そうよ、日の丸振った?」
「あー…いいえ…」
「きゃぁあ、非国民よ!」
「其れ所じゃなかったんだって。頭痛ぇし、意識無かったんだって。そうか、だから課長、二日休みな、って云ったのか。」
気前が良いと思った。其の時は一刻も早く自宅に帰りたいと思っており、気前の良さの理由等考えて居なかった。すると女は布団から顔を出し、だから帰って来たのかと思った、と外したボタンの隙間から腹部にキスをした。
「ま、いっか。帰って来れたし。」
「仕方無いわね、今日は勘弁してあげるわ。」
「アリガト、お姉様。」
女は身体を離し、きちんと枕に頭を乗せ、拓也の指にキスをした。
目覚めのキスがあれば眠りのキスもあると思う。
実際拓也は女のキスで眠りに付く。
起きた時、女の姿は無かった。十時だった、当然女は仕事に行っている。暖かいリビング、微かに珈琲の匂いが残っていた。サイフォンのスイッチを押し、テーブルに置かれたメモを眺めた。
拓也が非番の日、決まって女はメモをテーブルに残す。其れを読み乍ら珈琲を飲むのが拓也の休日の始まりだった。

メリークリスマス拓也、今日は七面鳥だぜ

胴体をこんがり焼かれた七面鳥が大きく涙を零すイラストが描いてあった。

追伸 二号機鳴ってたよ

其の一文に拓也はカップを置き、慌てて枕元で充電される電話を開いた。
不在着信五件、ショートメール二件、柳生節子。私用電話と仕事用にはメールも合わせて十件以上の着信が本郷からあった。
「おい龍太!」
「やっと繋がっ
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