第1章・一年前
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…」
「謹慎はせんで良い、其の代わり、今日から一ヶ月、家には返さん。」
「ワァオ…、あざーっす…、課長だぁい好き…」
此れで年明け迄、夜勤と無休が決定された。
電話を切った拓也は溜息を吐き、ダッシュボードから誘導棒を取り出すと野次馬に向かって振り回した。
「ほら、散れ。公務執行妨害でしょっ引くぞ。緊急車両の進入妨害は公務執行妨害に値すんだよ。」
「あんた、警察かよ…」
「交通課じゃねぇけどな。」
ほら、と男に手帳を見せ、散った散った、パトカー入んねぇだろ、と野次馬に威嚇を続けた。
そうこう威嚇を続けて居ると、課長の寄越した交通課のパトカーが停まり、又派手にしたねイノさん、と年配の刑事が笑った。
「イノさんが事故とか初めてじゃない?」
双方から免許証を受け取り、記帳する刑事は云う。
「折角のゴールドだったのに。可哀想。」
「木島がうるせぇから、車検で買い換える予定だったのによ。」
拓也の言葉に車検ステッカーを確認し、又笑った。
「二月が車検か…。何、修理すんの?後三ヶ月もねぇじゃねぇか。」
「迷ってんだけど。」
「修理しねぇで売ってもなぁ、だからって云って修理も馬鹿らしいしなぁ…」
「マジ如何したら良いんだよ…、こんな事故車、何処が引き取ってくれんだよ…」
「まあ…」
刑事は車の状態を見、双方の車を動かさせた。そしてまじまじとフロントを眺め、あ、こら無理だわ、と写真を撮った。
「こっちのワゴンも開かんな…」
「だろう!?ひでぇよな!?」
「…御前、何キロ出してた。」
「え?」
ノック式のペンを顎下でカチャカチャ鳴らし乍ら刑事は聞いた。じっと道路を見詰め、四十?其れ以上?と首を傾げた。
「ええと…」
「此処、点滅信号、な。」
くるくると、先端にチョークが付く棒を回す刑事は信号を差し、続けて道路に白線を引いた。
「ブレーキ痕、な?」
「え?何?俺が悪いの!?」
「まあ、なぁ。いや、イノも悪いよ。」
「なんで!?俺が突っ込まれたんだぜ!?」
男は一層興奮し、仲間だから助けんだろ!?と唾迄飛ばし始めた。
「いや、内輪だからって訳じゃねぇよ、御宅が不利な状況だって云ってるの。イノ側にブレーキ痕がねぇって事は十キロ出てねぇもん。どっちかってぇと、御宅が突っ込んだ側。」
「御前、教習所で何習った。え?点滅信号、意味判るな?」
交通課二人の刑事に詰め寄られるが、元から頭が悪いのか、男は状況が全く飲み込めて居なかった。
誰だ、何処の教習所だ、こんな阿保に免許交付した阿保は。
最悪な奴に突っ込んだ、と拓也はうんざりした。
「イノさんは黄色なんだよ。御宅は赤。判るな?」
「はあ!?黒じゃん!」
「…いやいやいや、車の色の話じゃねぇよ。そら御宅の車は、漂白に失敗した金魚みたく変な赤けどさ。」
「阿保か
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