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Holly Night
第1章・一年前
―3―
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君よりこっちが良い、と男は妹を指名した。
君なら五万だけど此の子なら毎回十万出してあげる、尤も、中学生になったら買わないけど。
だから一週間に一度妹は十万を手にした。
其の全ては母親のギャンブルで消えた。
けれど少女は何も思わなかった、自分が犠牲になった訳でもないし、資金の為に咥え無くても良い。小遣い稼ぎに下着と写真は売り続けたが、結局は生活費で父親に取られた。
五万あるかないかの金で一家六人が生活出来る筈がないのに。
終わりは、呆気無かった。
夏だ、暑い。当然家は暑く、煩いのと暑いのどっちが良いか天秤に掛けた時、煩い方が良かった。なので日中はパチンコ屋に居た。
託児所と云うかキッズルームと云うか、兎に角少女は其処で四歳の弟と一緒に居た。私見てますから、と云うと十五歳でも入れた。涼しい上にウォーターサーバーもあった。母親が何時終わる毎日違う為一概には云えないが時間は潰せた。
コンビニ行って来ます、と託児所を出た時肩を叩かれた、元顧客だった。

最近羽振良いみたいだね。

十五歳に云う言葉では無いだろうが、少女は頷いた。

ね、お小遣い欲しくない?

其の男は顧客の中でも比較的若く、未だ二十代だった。二十代といっても三十路に片足突っ込んでいるような二十代である。
此の事が決定打だった。
男の車に乗り込み暫くすると、窓を叩かれた。其の警官の爽やかな笑顔と云ったらない。
前々から少女に目を付けていた店員が通報し、男は逮捕、序でに両親も警察に連れて行かれ、少女達は施設に送られた。
其の後も酷かった。母親から罵声を浴びせられ、少女は土下座して謝っていた。

もう良い。

土下座する少女を抱き締め拓也は云った。

逆だろうが。テメェがしろよ、土下座。自分が何したのか判ってんのか。座って千円崩すより、テメェが咥えて千円得て来いよ。

拓也と、本郷を含む其の場に居た生活安全課の刑事全員から冷笑を浴びせられた母親は在ろう事か、少女を引き受ける為其の場に居た柳生に手を挙げ、傷害が上乗せされた。
「荷物少ねぇな。」
「質素って云って。」
「何でも良いんだけどさ。」
少女の心みたく、荷物は軽かった。
少女の荷物を持った拓也は施設長の顔を見、困ったように溜息を吐くと肩を叩いた。
「あんたがそんな顔する必要ねぇよ。」
「でも井上さん、あの…」
「大丈夫、あんたはちゃんと面倒見てくれたよ。唯、歳近い奴等と一緒の方が良いだろう。年上から可愛がられる事覚えなきゃ、年下可愛がられねぇだろ?」
「そうですね…」
少女が此の施設に居たのは二ヶ月ばかりだ。職員にも他の子供にも何の情もないのかスタスタ歩いて行った。
叱ってやりたい所だが、職員の彼女への態度を考えると強くは云えない。
「よし御前等、又来週な。」
周りに群
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