第1章・一年前
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誘ってんの?
助手席に乗り込んだ拓也は聞いた。
――何でそう思うの?
――いや…
――女は気儘なの、其処に考えは無いの。よぉく覚えておき、坊や。
――帰りてぇんだけど。
――帰さないって云ったら如何すんの?
え?
果たして声に出たか、拓也と女の口は重なっていた。
細い拓也の腕をしっかりと女は掴み、拓也がシートにきちんと乗ったのを感じるとシートを後ろに流し、垂れ下がる拓也の髪を掬い上げた。
――気持ち良い、井上君の身体、冷たくて気持ち良い…
――マジで勘弁して、俺十五。考えて。あんたマジで刹那的だな。
――良いじゃん、其れで。十五でも男じゃん。セックスは出来るよ。私十三歳だったもん、相手は十五歳だったよ。
――じゃなくて、未成年に手ぇ出すなって云ってんじゃなくて…
女は絡み付かせた腕を解き、シートに倒れた。
――あ、そう云う事か。
――そう云う事です、お姉様。悦ばす事も出来ない子供で済みませんね。
女はシートを起こすと拓也をきちんと助手席に座らせ、車を出した。
漸く帰れる、此の女マジでヤベェんじゃねぇの…
成人女性に誘拐されてますと警察に電話しようかと、車の中で何度も考えた。
矢張り、通報しておくべきだった。
停まった車から降りたくなかった。此の場合、幾ら管轄外の職務怠慢お巡りでも流石に動いてくれるだろう、未成年者を誘拐しホテルに連れ込み強姦しようとしているのだから。
此れが成人男性と女子高生ならニュースにでもなろうが、成人女性と男子高校、拓也が婦女暴行で調べられるかも知れない。
――何処が良い?
――もう、何処でも良いです…
女は丁度空いていた一番高い部屋を押し、薄暗いエレベーターに乗り込んだ。
――よぉし、飲むぞぉ!ほらほらあんたも飲む。
鞄をベッドに投げ捨てた女は冷蔵庫から缶ビールを二本取り出し、プルトップを開けると水の如く一気に飲んだ。そして、テーブルにあるメニューを開くと焼酎と缶ビールを五本追加注文した。
――あ、お腹空いてる?三時位に食べたっ切りだけど。
恐怖に食欲が湧かない。
――要らない…
――おいおい成長期、食べろよ。でかくならんぞ。チンコ小せぇ侭で良いのかよ。
――良い…、怖い…
――何で怯えてるんだよ。
――今から強姦されんの判ってんのに、怯えない奴なんて居るかよ!
リンゴーン、と部屋に響き渡るベル、女の注文した品が届き、今此処で“助けて下さい”と叫べばフロントから通報して貰えるだろうか。
考えていると酒を持った女が目の前に立ったので諦めた。
――強姦?人聞きの悪い。此れは同意だよ。
――俺が何時、貴方と肉体関係を結ぶ事に同意しました!?
――何でも、云う事、聞くんだろうが、え?良いよ、学校に云って
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