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Holly Night
第1章・一年前
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いから、暗かったし、違ったら井上君に迷惑掛かると思って…
――うおお…まじか…、あんた女神だな…
――やっぱり…
――何でも云う事聞くから、マジで黙っててくんねぇかな…
――だったら始めからしなきゃ良いでしょう!

女の張り声に拓也は慌てて口を塞いだ。

――御尤も、反省してるから、静かにして…
――悪い子!井上君悪い子!
――判った、判ったから、ね?お姉様、しーしー。
――なんでも云う事聞くの?
――ええもう、全裸で土下座せえと仰るのでしたら致します。
――じゃ、飲み行くの付き合ってよ。
――は…?いやいやあんた、仮にも教育者になろうとしてんだろ…、何生徒誘ってんだよ…
――今更何よ、飲んでる癖に。私に説教すんの!?
――嗚呼、うん、そうね、俺が云える立場じゃねぇな、うん。だからお願い、静かにして…

流石に教育実習中は不味いと云うので、本気で誘う気か、女は夏休みが良いね、と訳判らぬ事を云った。
此奴教師にしたら駄目じゃね…?
拓也はそう思った。拓也で無くとも思うだろう。今からでも教育委員会か大学に通報して於こうか。
思ったが、何と言うか、悪事の共有で従った。
女の実習終了は七月だった。其処から大学で色々纏めるから落ち着いたら連絡するね、と連絡先も交換せず彼女は大学に戻った。
如何やって連絡する気なんだろう。
思って居ると夏休みが始まり、忘れた頃に女と会った。

ハイ坊や、暇ならお姉さんと遊ばない?

女は運転席からヒラヒラと暢気に手を振り、無視して歩いて居ると、今更バラしてもイインダヨ…?、と脅迫された。
やっぱり通報しとくか。
仕方無し助手席に座り、かなり遠い所迄連れ出された。
其れも其の筈、横浜中華街迄連れ出された。何故こんな場所迄来たのか聞いたら、都外の方が良いでしょう、誰も居ないし、補導されても県が違うから補導員も警察も動かないよ、彼奴等、管轄内でしか仕事しないから、精々十分の説教かな、でも大丈夫、私が居るから……胸張って云う事なのか?此の不良教師(の卵)と、車から降りた女の後を付いて行った。

――一寸待て、あんた車だろう?
――うん、そうだよ。徒歩では来ないよね。
――酒…
――昼間から飲む訳ないじゃん、ばーか。

ケラケラと女は笑い、たっぷり中華を堪能し、彼方此方振り回された後、夜の十時過ぎに何処かも判らない高台に車は停まった。
夏なのに風は冷たく、車から降りた女は全身で風と戯れていた。

――私、此処好き。
――ふぅん。
――気持ち良い…

そう目を閉じた女はボンネットに身体を乗せ、其の横に拓也は座った。

――星、綺麗。
――あ、本当だ。

一瞬女と目が合ったが、女はするんと運転席に乗り込み、シートを倒した。

――あんた、さっきから
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